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数日後……。
「あの日何があったのか、全然覚えていないんです。赤間さん、私、本当に公園のベンチで寝ていたんですか?」
紀枝が訊いてきた。
「あ、うん。たまたま通りかかって見つけたんだよ。良かった、何事もなくて」
適当に誤魔化すアカマ。愛奈と手をつないでいた。
「ノリちゃん、お酒飲んで寝ちゃったのかなって言ってたよ、みんな」
愛奈の話に、首を傾げる紀枝。
「そんなことないと思うけど……」
「まあ、いいじゃないか。無事だったんだから」
アカマが笑いながら言う。詳細を知ってもらうわけにはいかない。
やれやれ、とにかく殺さず、そして殺されずに済んだな。まだまだ、立派な庶民への道は険しそうだが……。
空を見上げるアカマ。雲の間に、いつでも殺ってあげるわよ、と微笑むエリカの顔が見えたような気がした。
Fin
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