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 疾風を感じさせる速さで、誰かが動いた。あっという間に後から現れた男2人の顎を蹴りあげ、それぞれから奪ったナイフを放つ。  自らの武器が胸に突き刺さり、男達はドウッと倒れた。  エリカっ?!  息を呑むアカマ。そう、現れたのは彼女だった。  エリカが微かに笑う。だがその首に、残った男のワイヤーが巻きつく。  「あっ?!」と驚き目を見開くエリカ。  男がワイヤーを引く。  エリカは首を絞めつけられないように、両手でワイヤーを掴みながら自ら男の方に転がった。  男の動きも速い。エリカにワイヤーをほどくヒマを与えず、その腹部に膝蹴りを見舞う。  「あうっ!」と声をあげ倒れるエリカ。  男は足下の彼女を見ると、ワイヤーを引っぱりながら無理矢理立たせていく。自らの顔のあたりまで持つ手を上げた。  エリカは男の目の前に爪先立ちにされてしまった。為す術なく伸びきった体が、ガクガクと震えている。  もがき苦しむ彼女の顔をのぞき込み、男が残忍な笑みを浮かべた。  「威勢よく出てきたが、ここまでだ、お嬢さん。今眠らせてやるよ」  男はそう言って、更に手を上げて締めつける。  「うっ……くうぅぅ……」   エリカの呻き声が徐々に弱々しくなっていく。ワイヤーを掴んでいた両手から力が抜け、ダラリと垂れ下がった。  男がワイヤーを大きく回し、エリカの体をくるりと反転させた。一気に締め上げてとどめを刺すつもりだ。  気を失ってしまったのか、エリカの体は人形のように軽々と翻る。  まずいっ!   駆けよろうとするアカマ。  しかし、次の瞬間倒れたのは男の方だった。細長いナイフが胸に深々と突き刺さっている。エリカが好んで使う武器だ。素早く取り出し、反転させられた勢いを利用して放ったのだろう。さすがだ。  倒れた男の横で、エリカはしばらく「はあ、はあ……」と荒い息をしていた。  「大丈夫か? かなり手強いヤツだったが」  アカマが声をかける。  ふうっ、と一息つくエリカ。「どうってことなかったわよ」と言って顔を上げた。  「ふっ……。強がりも超一流だな」苦笑するアカマ。「それにしても、なんで俺を助けた?」  「あなたを()るより、こいつらを()る方が少しは寝覚めがいいと思って」フッと笑う。そして真顔に戻り「あの研究所の主要な連中は、じきに死ぬわ。依頼があってトムのリストに入ったの。だから、安心してお父さんを目指してね」  そう言ってウインクすると、エリカは去って行く。  アカマはその後ろ姿に、感謝するよ、と頭を下げた。
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