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「ふうん……」心なしか柔らかな視線を向けるエリカ。「それはわかったけど、なんで自分を殺す依頼を?」
「人間なんて、弱いものだろ? 何かあったら決意なんてすぐ挫けちまう。うまくいかなくて裏社会に戻っちまうかもしれないし、また殺しに手を染めるかもしれない。だから、そうならないように、自分への歯止めをかけたのさ」
トムへ依頼したのは、今後誰かを殺害した場合、その理由にかかわらず自分を殺させてほしい、ということだった。暗殺者のリクエストはあるか、と訊かれたのでエリカを指名した。
「なんで私を選んだの?」
「どうせ殺されるなら美人がいいだろう。暗殺の前にキスでもしてくれたら、なお嬉しいね」
「今この場で殺してあげましょうか?」
鋭い視線を向けるエリカに、アカマは震えながら「冗談だよ」と手を上げる。そして続けた。
「あんたなら、仮に俺が往生際悪くなって反撃したとしても、確実に殺してくれるだろう? 仕事に関する信頼さ、選んだ理由は」
エリカは肩を竦めた。そして、こくりと頷いて歩き出す。途中振り返り……。
「銃とナイフ、どっちがいい? あなたを殺すとき」
「い、いや」ゾクッとしながら応えるアカマ。「即死にしてくれるならどっちでもいいよ」
「わかった」と応えて去って行くエリカ。
美しい後ろ姿を見ながら、アカマは背中に冷や汗をかいていた。
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