24人が本棚に入れています
本棚に追加
3
その後しばらく、アカマは社会勉強をしながら、ホームにもボランティアとして訪れ、雑用を手伝った。
愛奈は彼を見かけると、嬉しそうに駆けよってくる。
そのたびに胸の奥が疼く。早く立派な一般庶民になりたい、と思った。
ある日、紀枝に呼び止められた。相談があるという。深刻そうな表情だった。アカマは夜、彼女とともにホーム近くのファミレスに入った。
席に着く直前、数名が大声で笑いながら通り過ぎる。他の人達のことなど微塵も考えない、傍若無人な連中だ。
微かに肩が触れた。相手は「チッ! 気をつけろよ」と吐きすてる。
なんだと……? すぐそこにフォークやナイフがある。素早く手に取り、後ろにまわってうなじに突き刺し、脊髄をグリッと……。
いかん、いかん……。慌てて首を振る。
「どうかしました、赤間さん?」
紀枝が不思議そうな顔で訊いてきた。
「いや、何でもないです。で、話というのは?」
「実は……」
紀枝は、注文や料理が運ばれてくる時以外は話し続けた。
青葉児童ホームは運営費が逼迫しており、年々存続が厳しくなっているという。今の施設長は、もし立ちゆかなくなった場合、隣の区にある「愛のこども園」という大規模な児童養護施設に、今の子供達を移す事を考えているらしい。
愛のこども園の方も了承していた。しかしそこは、実は裏で犯罪を行っているという。
「犯罪って、どんな?」
怪訝な顔で訊くアカマに、紀枝は声を潜めながら言った。
最初のコメントを投稿しよう!