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 「入居している子供達を使った、人体実験です」  「えっ?!」と思わず声をあげそうになる。  「愛のこども園は、日の出製薬という大企業がバックについているんです。だから、資金的にも恵まれていて、設備の整った施設を運営できる。でも、その影に隠れて、新薬の実験のために子供を使ったり、もっと酷い事もしているんです」  「もっと酷い事?」  「臓器の密売です。病気の手術と偽り子供達から臓器をとり、それを販売している」  「そんな……」  唖然とするアカマ。  「データを調べてみればわかります。あの園の子供達は、あきらかに病気になったり不慮の死を遂げる率が高いんです。でも、大企業がバックについているから、なかなか問題視できない」  「紀枝さんは、どうしてそのことを知っているの?」  「私の知り合いに、フリージャーナリストがいたんです。日の出製薬と愛のこども園の不正について調べていて、その過程で私に協力を求めてきました。私も最初は半信半疑だったけど、知るうちに事実だとしか思えないことが出てきて、許せないと思いました」  「そのジャーナリストは?」  「一ヶ月ほど前に行方不明になって、二週間後に遺体で発見されました。お酒を飲んで誤って横浜港から海に転落した事故死だと……」  殺されたな……。  険しい表情になるアカマ。  「赤間さんは、フリーライターの仕事をしているんですよね? 同じジャーナリストと言っていいんですよね? 亡くなったその方を引き継いで、私と一緒に調べて不正を糾弾してくれませんか?」  い、いや、俺は、暗殺業の隠れ蓑として名乗っていただけで、ジャーナリストなんていう立派なものじゃない……と言いたかったが、そんな雰囲気ではない。  考えておきます、と応えてその場は別れた。
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