祈りのように

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                -11- メニュー表を見ていると、一般的なネタに交じって、変わった名前の寿司があった。 「カリフォルニアロールってなんですか?」  僕はおじさんに聞いた。写真から、巻き寿司だというのは分かる。でもなぜカリフォルニアなのかは想像がつかなかった。 「食べてみるといいよ。アメリカ人向けに考案された巻き寿司。海苔になじみのないアメリカ人向けに、外側に『とびこ』をまぶしてある。味もマヨネーズを使ったりして、アメリカ人向けにアレンジしてあるんだ。でも、僕たちが食べても意外といけるよ」 「カリフォルニア州の日本人シェフが考案したから、『カリフォルニアロール』って言うのよ」  おばさんが補足してくれた。僕は、それを注文した。  予想よりも大きな、3切れの巻きずしが出来てきた。その大きさに驚いているとおじさんが笑った。 「アメリカのものは基本的に何でもデカいからね」  食べてみると、シャリとマヨネーズの相性が良く、とびこの味もアクセントになっていて僕はおいしく感じた。ただ、これだけでお腹がいっぱいになってしまった。おじさんは、他にどんどん寿司を頼んでいった。僕もいただいた。大きかったのはカリフォルニアロールだけで、あとは普通の大きさだった。時差ぼけと疲労と緊張で、まだ万全ではない体調の中、僕は無理をして、出てくる寿司を食べた。正直、味の違いはよくわからなかった。ただ、カウンターで寿司を頼むときっと高いんだろうなと思った。
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