祈りのように

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-13-    僕が昼食を食べ終わると、みんなで外に出た。日曜日の昼下がり。閑静な住宅街。幅広い道路と、広い敷地の家々が連なっている。明らかに日本とは違う景色に戸惑いながら、僕はおじさんの家の広い庭の芝生の上で、自分が異国にいることを不思議に思った。  僕たち三人の乗った車は住宅街を走り始めた。アメリカが車社会だというのは知っている。どの家にも車が数台あったり、巨大なガレージがあった。車は、大がらなピックアップトラックや長大なステーションワゴンが多かったが、セダンタイプの車の中には、僕が知っている日本車もあり『カムリ』や『アコード』はたくさん見かけた。  後部座席の車窓から、白人の男性が庭の手入れをしていたり、若い夫婦が歩道をウォーキングしているのが見えた。ランニングをしている初老の男性がいる。いや、よく見るとあちらこちらでランニングしている人たちがいる。この寒空の中、白い肌を赤く染めながらみんな半袖に短パン姿で住宅街の歩道を走っている。 「あんな格好で寒くないんですかね?」  僕はおじさんたちに聞いた。 「アメリカ人は体を動かすことが健康にいいと思っている。運動ときたら、冬でもあの格好でやる。でも、闇雲に運動すればいいというものでもない。あれだけバランスの悪いものを毎日たくさん食べれば運動もくそもない。肥満にもなるよ」  おじさんが運転しながら吐き捨てるように言った。 「アメリカ人は健康にいいからといって、よくサラダを食べるの。でもね。大量にドレッシングをかけて食べるのよ。それじゃあ、体にいいわけないじゃない」    おばさんが言った。僕がアメリカに来てから、確かに、アメリカ人は太っている人が多いような気がした。アメリカ人と言えば、映画俳優のようなスタイルのいい人ばかりと僕は勝手にイメージしていた。でも現実は全く違っていた。  
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