祈りのように

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               -14-  住宅街を抜け、両側に林の広がる幹線道路を抜けると、巨大なショッピングモールが見えた。昨日見たのとは、違うショッピングモール。はるか先に見えるショッピングモールのずいぶん手前から、広大な駐車場が広がっていた。 「アメリカ人は絶対に譲ってくれないんだよ。しかも急ぎもしない」  駐車場内の車道を横断して歩く歩行者にいらいらしながら、おじさんは空いている駐車スペースを探した。日本なら、車が近づいてきたら、人は急いで避けたりするだろう。アメリカ人はマイペースなのだと僕は思った。  建物付近に駐車スペースを見つけ、おじさんは駐車した。巨大なショッピングモールの、DIYコーナーの入り口から僕たちは建物に入った。DIYコーナーと言っても、巨大なホールに果てしなくDIY用品の展示が続く。当時はまだ日本にはこれほど巨大なホームセンターはなく、僕はこの博物館のようなばかでかいDIYコーナーに、ただただ圧倒された。 「帰りに買っていこう」  おじさんは庭木の手入れに使う高枝切バサミを見つけて言った。それから広大な売り場に延々と歩くDIYコーナーを抜け、僕たちは衣料品や雑貨のコーナーに入った。入ってすぐに、ビレッジバンガードのような店に寄った。店頭の大半の展示スペースに、一見、虎のような模様に見える黄色い猫のキャラクターのぬいぐるみがびっしりと並べられていた。 「『ガーフィールド』って言うの。今、アメリカでものすごく流行ってるのよ」  おばさんが言った。 「おばさんも『ガーフィールド』が好きなんですか?」 「ううん。私は、好きではない。私が好きなのはディズニー。ディズニーグッズを集めてるの」  店の奥に行くと、子供のおもちゃの中に混じって、球体の中で妙な光を放射する不気味な装置が目についた。ガラス球に手を近づけると、中心の電極から、細い電気の光がゆらゆらと僕の手をめがけて寄って来た。それはガラス球の中で止まっていたのだが、僕は怖くなって逃げた。後にそれは『プラズマボール』だと知ることになるのだが、アメリカでは、こんな妙なものが普通に売られているのかと当時の僕は驚いた。
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