祈りのように

2/232
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/232ページ
                -1-               「留学まで」  高校を卒業して、いろいろな言い訳をしながら、2階の自分の部屋でひきこもる日々を半年続けた。表向きには留学の準備をしていたということになっていたものの、自分で留学の準備さえ何ひとつしていなく、ただ親戚が海外にいてアメリカに来て勉強してみないかと言われていただけだった。  何も定まった目標がなかった僕は、ただ漠然と留学することを考えた。本当に漠然と、常に頭の片隅に何をしなければならないのかを常に留めながら、僕は何もせず、何も考えずにただ過ごす日々が続いた。それは本当に恐ろしい状況だった。でも当時の僕には、何もしなくても生きていられることに快楽を感じることができていたのかもしれない。  当時の僕は、今で言うと社交不安障害(SAD)と診断されてもおかしくないレベルだったと思う。周囲の目がひどく気になり、何も出来なくなる。たまに考えすぎたり、全く考え無かったり。なのに負けず嫌い。負けるとわかることには近づかない。それでいてプライドだけは高い。自分は間違っていないと思い、そして自分を高く見せようとしていたと思う。  ひきこもっていたのではなくて、留学の準備をしているのだという、都合よくプライドを保つマヌーバーを携え、僕はかけがえのないはずの日々を、ただ淡々と過ごしていった。  
/232ページ

最初のコメントを投稿しよう!