祈りのように

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                -2-  そんな自分が、実力主義で自己主張の強いアメリカなんかに行ってどうするの、と、今では簡単に思う。しかし当時の僕は違った。行けば何とかなるだろうと考えていた。それはあまりにも楽観的過ぎた。  夏ごろにいよいよアメリカにいる親戚から連絡が来て、いつ来るのかと問われた時、どうすればいいですか? と僕は聞いた。恐らく親戚はひどく呆れたに違いない。けれども親戚は、それから懇切丁寧にいろいろと当たってくれて、ものすごく手間のかかるアメリカの留学手続きの大半をしてくれた。結局僕がしたのは、パスポートを取ってビザを取ったくらいの誰でも出来ることだけだった。  全ての手続きが完了したのが9月。いよいよ10月に渡米が決まった。すると急に不安でいっぱいになった。それで、さすがに英語を勉強し始めるかと思いきや、当時の僕は何をどうすればいいのか分からなくなって、また「行けばなんとかなる」という、根拠も理論もない投げやりな妄想の中に逃げ込んでしまった。  
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