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プロローグ
「――――……葵……?」
帰り道、家まであと少しという、歩道沿いの桜の樹。その下にあるベンチ。
人が座ってる事に気付いて、何気なく視線を向けて。
桜の樹を見上げている存在が、信じられなくて。
オレは、立ち止まった。
「――――……あ」
ふとオレに気付いて、こちらを向いて、立ち上がる。
「久しぶり、大和」
嬉しそうに笑うのは――――……間違うはずがない。
吉野 葵だ。
声を掛けられても、笑顔を目に映しても、信じられなくて、少しの間見つめ合ったまま動けずにいると。
風が吹いて、桜の花びらが、散って、舞った。
――――……綺麗な、光景を、ただ見つめる。
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