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「今、あなたはどこにいますか?」
そう質問されたとき、私は”どこにもいません”と答えると思う。いや、もっと正確に君に伝えようとするのなら、”どこにもいないように思われたいです”と答えたいのだ。
人は死んでいない限りどこかに居る。性悪く付け加えるならば、死んだとしても他人にどこかに居ると思われてしまうことさえある。それは人によって墓だったり、亡くなった場所だったり、思い出の地だったりさまざまだろうけれど。それでも、私たちは拡大縮小が容易な無料地図アプリを弾いてピンを立てるように他者の存在の場所を自ら定義して手に入れておきたいのだ。
私、速切 乙華は今、そんなことを考えることでしかこの気まずさを紛らわすことが出来なかった。
なぜならば、今まさに同級生が知らない女の子に告白されんとしている体育館裏に、運悪く居合わせてしまったのだから。
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