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恋愛感情は、ある種のピンだ。どこにでもいけそうなものを”刺して留める”。彼は私によくピンを刺したがった。逃げる蝶の羽を生きたままピンで刺すように、ひらりひらりと逃げる私に何度も何度も鋭利な凶器を向ける。
(普通はそんなこと、しないのに)
特大感情を常に向けられるのは疲れる。私の目が他の誰かを追っていないか監視するような気配も疲れる。けれども、それなのに決して離れられない。私にとって彼は必要で、彼にとっても私は必要な存在であるらしかった。
(よくは思い出せないけど)
とどのつまり、私は彼がいない空白感に苛まれながらもどこか清々としているのだ。
(いや、違う)
“罪悪感を忘れられて気持ちいいこと”に罪悪感を覚えている。
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