1人が本棚に入れています
本棚に追加
/
高校に入って初めての転校生は私を探していたらしい。
「ねぇ、速切さん。僕、あなたにずっと会いたいと思っていたんです」
女の子であればいつか、一度は夢にみたことがある光景だ。自分だけを必要としてくれて、自分を好いてくれるカッコいい男の子。
「覚えていますか? 入院していたとき、一緒に遊んでくれましたよね?」
過去のことは記憶が曖昧だ。病院に居たのは7年以上も前のことで、覚えていないと正直に答えると急に強く手を握ってきた。
「どうして僕のことまで忘れてしまったんですか」
『わからない』
「僕はずっと忘れなかったのに。また会える日を楽しみにしていたのに」
悲しくて仕方がないという様子の彼は、それなら好きになってもらったらいいという謎理論で私の友達になった。
「速切さんだけが、あの頃の光だったんです」
/
最初のコメントを投稿しよう!