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今、私は仕方がなくここに居る。けれど、いつかはここではないどこかに行って消えてしまいたい。
「はい、これ。本日分の抑制剤です。いつもお薬代として熱いキスしてくれてたの、覚えてます?」
『悪質な虚偽だ。松中くん、私、やっぱ君のこと好きになれないや』
「はい、残念。森永ですー」
森永くんから飴を受け取った私はそれを大事にポケットの中に入れた。
「そういえば僕があげた飴、予備があったなんて聞いてませんよ」
『......思い出にとっておきたかったから』
いつかこの日々は終わる。私がこの能力を失うか、彼が能力を失うか。永遠にこのままの関係性ではいられないのだ。
「思い出をつくるなら二人でにしましょう? いつか、好きになってほしいです」
『そんな日は来ないと思うよ』
沢山の願いを今日でない”いつか”に託そう。
この不安的な私をピンで留められないように。彼が本当に好きな人を見つけられるように。
私が誤って壊れたままの彼をピンで留めてしまわないように。
『でも、君には幸せにはなって欲しいと思ってる』
私たちは今日も報われない。
(おわり)
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