[nowhere else to go…]

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「顔が良くて、人当たりも良くて、成績も良い男子に好かれて、何が不満なのか教えてくださる?」 『少なくとも私は悪い冗談だと思っていて、好かれる要素が特に見当たらなくて不審だから』  このやり取りを友人の後藤嶋 凛(ごとうじま りん)と何度しただろう。ありふれた教室でのありふれた友人とのお昼のやり取り。ただ、ありふれていないのは、話題の渦中の人物が一緒にお弁当を持って机を囲んでいるところだろうか。 「恋心を怪しまれるってことは人としての信頼がないってことですよねー。罰ゲームや弄ばれてる感じがするってことです? あぁ、ちなみにそういうことは全くないです。純粋に速切さんが大好きです」 「片想い乙ですわ。まぁ、でも私もあなたのことはちょっとストーカーっぽいので恋人候補として見れませんの。顔は及第点なのに残念」  凛の口調と表情は穏やかだが、その癖発言がエグい。クラスでもイケメンの方に分類される彼の顔を及第点と言い切るあたり、お嬢様として顔面観察の経験が豊富なのだろう。だからと言って、羨ましさなんかは全くないけれど。 『うん、早く、諦めてね』  そう言って全く心が痛まないわけじゃない。私も、そこまで非情ではないのだ。普通の高校生ではない私であっても、普通に人並みの心はあるのだから。
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