1人が本棚に入れています
本棚に追加
私は完食したお弁当箱を畳んで本日の豆乳にストローを挿す。凛がデザートのシャインマスカットを房からぷちりとわけながらこんな話を始めた。
「ーーそんなことより、最近”空白病”というのが流行ってるらしいんです。聞いたことありません?」
『”空白病”?』
いつもの通り初耳だ。凛はよくこう言った都市伝説を集めてくる。昼食の肴がてらSPに集めさせた噂話を披露してくれるのだ。
「神隠しと部分記憶喪失が重なったような病気らしいですわ。最も、神隠しに遭うのは本人で、部分記憶喪失になるのはその周りの人ですけれど」
「僕も聞きました。確か”誰か大切な誰かが居なくなったことには気が付けるけれど、それが誰だったのかわからない”って残された人たちが証言してるアレですよね」
話を総合すると、例えばお付き合いしている彼女がいなくなったのだとして、その彼氏は誰か自分にとって大事な人が居なくなったのはわかるけれど、それがどの人か分からない。なおかつ日記やネットの履歴などを見てもそれが誰だかピンとこない病気らしい。
どこでそうなるかもわからない。ただ、気がついたら神隠しにあっていた人を思い出す。しかし、思い出した頃にはバッタリとその人の死体を見つけてしまうのだという。
『どこに居るのか探したいけれど、どこにもいないしわからない病気、かぁ』
「神隠しされる側になると結果的に死ぬんですねー。うん、それは本当に”僕達向き”の話ですね」
毎回こんな話がされる度に思うのだ。もしかしたら、解放されるかもしれない、と。
最初のコメントを投稿しよう!