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『中林くん、付いてこないで』
「中林じゃなくて森永です。もう、そんなつれないこと言わないでくださいよー」
帰り道、私は不本意ながら森永くんと一緒に帰る形になっていた。完全に拒めないのは、彼が今の私にとって必要不可欠な存在だからだ。
「明日の分の抑制剤、欲しいでしょう?」
『自己認識で自分のことクズだと思ったりしないのかな』
「やだなー。心の声ダダ漏れじゃないですか」
私たちにはそれぞれ、ある能力がある。私は自分の意思で能力を抑えられないので、森永くんの能力である”抑制”の力を貰わなければ日常生活が送れないのだ。
助かっているといえばかなり助かっている。森永くんは透明なプラスチックに入ったカラフルな色の飴をくれる。一日に一粒。もちろん休日もかかさずに、だ。
「日頃のお礼にデートとかしてくれても良いんですよ」
『1ヶ月分とかまとめて渡してくれても良いんだよ』
「わー遠回しにお前の顔なんか見たくないって言うのやめて貰いたいですね」
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