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そうだ。私はいつも飴をなめていた。でも、どうしてだろう。好き、だったっけな?
ナイフとフォークで食べるタイプのお上品なりんご飴らしく、うきうき気分で準備をする。私の部屋に控えめな甘い香りが広がる。甘すぎず、しつこすぎないサッパリとした味。いつも甘い飴ばかりを舐めていたから、少しだけ趣向が違って嬉しい。
乙樹が私の机の上の瓶に触れた。
「この飴さ、美味しいのかな。いつも食べてるよね。俺にもちょうだい」
透明なプラスチックに入った飴。残りはほんの少ししかない。そう、全てが無くならないようにコッソリと溜めていたのだ。ーーでも、なんで?
『いや、でも。なんか大事なものだったような気がするからとっておこうかな』
私はなんとなく、本当になんとなく思いつきで飴の瓶を通学鞄の中に押し込んだ。
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