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失神した女子たちをみて、塩田は驚く。
「なんでこんなことに……」
周りを見渡して唖然とする塩田。その肩にポンと手をおく西宮。
「塩田。お前は自分の顔のよさを自覚したほうがいい。じゃないとこんなふうに大事故になるぞ!」
塩田は真剣な顔で西宮をみた。
「西宮。今は冗談いってる場合じゃないよ。いきなり皆、倒れるなんておかしいよ。熱中症か何かかもしれない。早くおちついて休めるところに移動させなきゃ。……手伝ってくれるよね?」
上目づかいでお願いする塩田。それをみた西宮は鼻血がでて、片手でそれを拭う。
「塩田ァ。俺にまで牙をむくのか!」
白目をむきつつ、西宮が叫ぶ。
「だから冗談いってる場合じゃーー」
塩田が反論しようとした時、声をかける人物が。
「塩田さん! ここは自分らに任せて、偵察にいってください!」
声の主は、自称塩田の舎弟だった。
「俺も手伝うよ」
くいさがる塩田。自称舎弟は、くいぎみにそれを拒否する。
「塩田さんが手伝ったら、後で戦争がおこるんでダメです! 自分らが近くの公園に運んでおきます。ぜひ偵察にいってください!」
「戦争なんておこらないよ。おおげさだな」
自称舎弟は、全力でつっこんだ。
「塩田さんは、自分の魅力をもっと自覚した方がいいです! とにかくここは自分らが面倒みるんで! 塩田さんは手伝わなくていいです!」
「でも……」
心配そうに、倒れている女子をみる塩田。西宮が叫ぶ。
「でもも、へちまもない! 塩田ァ。
ここは彼らを信じて任せておこう! 俺らは偵察にむかうぞ!
実は偵察をてびきしてくれる内通者と、中でおちあう事になっているんだ!
またせたら悪いだろ。ほらいくぞ!」
心配そうに、倒れている女子をみる塩田。その背中をぐいぐいおす西宮。
笑顔で親指をたて、自称舎弟らは倒れた女子を両脇に抱えた。
「後は任せてください、塩田さん! 俺たちを信じて!」
塩田は少し悩んだ。すてられた子犬のような目で自称舎弟らをみる。
「じゃあ、お願いするね。無理はしないで」
そんな塩田をみて、自称舎弟らは胸をきゅんとさせた。
「任せてください。塩田さん!」
やる気になった自称舎弟らは、ホクホクした顔で失神した女子たちを近くの公園へと運ぶのだった。
「さあ、塩田ァ! 俺らは偵察だ! いくぞ!」
後ろ髪をひかれる思いで、塩田は校内へとはいった。
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