いざ、偵察……!?

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3面あるコートが、金網でかこまれている。その中にある左端のコート周辺には、男女半々のギャラリーが大勢ひしめきあっていた。 「なんのさわぎだ、これは……」 西宮がにぎわっているギャラリーをみて、佐竹にきく。 「このギャラリーの数、佐藤がコートでプレイしているみたいだな」 ギャラリーの後方にたち、せのびをしてコート内をみる佐竹と西宮。塩田が佐竹にきく。 「佐藤って、さっき強いっていってた選手だよね?」 「うん、そう。くそ、ここからじゃ、わかんないな」 せのびをしながら、眉間にシワをよせる佐竹。その場でジャンプしながら、コート内をみようとする西宮。さりげなく塩田の後方に列を作っていたギャラリーが、U字型に塩田をとりかこみ始めていた。 「ちょっと俺、きいてくるわ!」 佐竹がギャラリーの後方にいる女子に、声をかけにいく。 「あの、ちょっといい?  今、すごく人が集まってるけど、なにかやってるの?」 女子はふりかえると、説明した。 「あ、佐竹先輩。いま佐藤先輩が、王子中名物、地獄の1ゲームマッチをしてるんです!」 「地獄の1ゲームマッチ?」 佐竹と塩田の声がハモる。 いつの間にか、塩田は佐竹の後ろに移動していた。 それにあわせて、塩田のギャラリーもふたりの周囲をとりかこみ、ちょっとやそっとでは抜け出られないような状況になった。佐竹はしまったと思う。 そんな佐竹の心配など気にもとめず、女子は顔をまっかにして塩田をみてつぶやいた。 「お、王子様……?」 塩田は頭に?マークをつけてこう返した。 「いや、違うよ。恋仲中の塩田っていいます。よろしくね」 にこっと笑う塩田をみて、後ろへ倒れそうになる女子。それをくいとめようと手をのばし、自分の方へひきよせる塩田。ひきよせられた女子の鼻に、ふわりと石鹸のにおいが香る。 「い、いいにおい……」 「ありがとう、柔軟剤のにおいかな?」 間近で塩田の王子様フェイスを直視して、いよいよ気絶しそうになる女子。それを救ったのは、意外な人物だった。 「ええい、どけい!」 塩田の背後から、西宮が平泳ぎするみたいに人と人との間に手をのばしてひき離し、塩田のそばにやってきた。 「西宮……強引にきたな」 佐竹が呆れていう。 「あ、あの、もう大丈夫ですので!」 いって、女子は塩田の腕の中からぬけだした。 「あ、ごめんね、急に。後ろに倒れたら危ないと思って、とっさにひきよせちゃった」 「いえ、こちらこそ。役得でした」 「役得?」 目を丸くして首をかしげる塩田に、佐竹がつっこんだ。 「お前、本当に天然だな!」 「え、どこが?」 「そういうとこだよ……」 呆れたまなざしで塩田をみる佐竹。塩田の顔のよさに少してれてしまう。
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