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佐藤 VS 塩田
テニス部員に案内され、部室棟にきた塩田。佐藤の予備のウェアとシューズに着替え、予備のラケットをもって、コートに入る。ネットをはさんで、ふたりは対峙した。
「おまたせ」
にこっと笑う塩田に、佐藤はいう。
「そんな可愛い顔して笑っても、手はぬかねーぞ」
「別に可愛くなんてないし。西宮や佐竹の分まで粘るつもりでやるから。覚悟してね」
ふっと笑う佐藤。ふたりの間には見えない炎が燃えたぎっていた。
ラケットトスをすることになり、佐藤は正位置、塩田は逆位置を選んだ。佐藤はラケットヘッドを地面につけ、コマのようにまわす。ラケットが倒れた結果、逆位置だったので、塩田がコートかサーブ権を選ぶ権利をえた。
「じゃあ、打ち返す方で」
さらっと佐藤が得意な方を選ぶ塩田に、佐藤は闘志を燃えたぎらせる。
「いいぜ。コートはこのままな」
塩田はうなづくと、コートの縦の長さを決める奥のラインより1メートルくらいさがったポジションに構える。
「へえ」
佐藤は塩田をみて、サーブ対策をしていることに感心した。思わずにやりと笑ってしまう。
佐藤はコート外から部員にボールを2つ投げてもらう。ひとつをポケットに、もうひとつを手にして、地面で何回かボールをバウンドさせる。
そんななか、主審がコールした。
「ザ ベスト オブ 1ゲームマッチ 佐藤サービス トュー プレイ!」
佐藤はボールを真上にあげ、サーブをうった。
ばひゅっと音がなり、あっという間に塩田のコートへと飛んでいく。
コートを左右に分ける縦のラインぎりぎりに、ボールがバウンドする。塩田はボールがとんださきにラケットを構え、佐藤がいる方向へボールを返した。
佐藤はそれをうけ、塩田の足元へボールをうち返しバウンドさせる。塩田ははねるボールをおいかけ、後ろむきでボールをうった。
佐藤はそのボールをワンテンポ遅らせて、ななめ右奥の、コートの縦の長さを決める奥のライン手前にうつ。
塩田はそれをうち返せず、佐藤にポイントが入った。
主審がコールする。
「15ー0!」
塩田は再びレシーブ位置に戻り、ラケットを構える。
佐藤のサーブ。今度はコートを左右に分ける縦のラインではなく、|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打ってきた。低く横へとはねるボールを塩田がおい、コートから大きく離れながらもうち返す。
佐藤は塩田が戻ってくるのをみこしてコートを左右に分ける縦のラインにボールをうつ。
塩田はなんとかそれにおいつき、空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球をうった。佐藤はそのボールをおい、バックステップしながら上からボールを打ち下ろす技をする。佐藤にポイントが入った。
主審がコールする。
「30ー0!」
塩田がレシーブ位置について、ラケットを構える。佐藤がコート外にいる部員にボールを要求し、2つうけとった。
今度はコートを左右に分ける縦のラインにそうようにサーブをうつ佐藤。そのままネットぎわへと走る。
佐藤の右ななめ後ろの角にむかって返球する塩田。佐藤は反応できずに、ポイントを逃してしまう。
主審がコールする。
「30ー15!」
佐藤がサーブ位置につくと、地面にボールをバウンドさせ、塩田をみる。塩田は、コートの縦の長さを決める奥のラインより1メートルくらいさがったポジションで構えている。それを確認した佐藤は、再びコートの外へとおいだすように、|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打つ。
コートの外においだされた塩田は斜めにうち返し、すぐにベースラインの真ん中を示す記に向かって戻ろうとする。その隙をついて、|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打っつ佐藤。
塩田がそれに反応して斜めに打ちかえし、ポイント差を縮めた。
主審がコールする。
「30ー30!」
佐藤がコート外にいる部員にボールを要求し、2つ受けとる。軽く地面にバウンドさせたあと、佐藤は再びコートを左右に分ける縦のラインにむかってうった。
塩田が球速に対応できず、バウンドしたボールを打ち返せずに、佐藤にポイントが入った。
主審がコールする。
「40ー30! あと1ポイントで勝利!」
塩田は、コートの縦の長さを決める奥のラインより1メートルくらいさがったポジションで再び構える。
佐藤のサーブ。今度も佐藤はコートを左右に分ける縦のラインにむかってうつ。
塩田はそれを斜めにうち返し、そのままネットぎわまでつめてきた。
はやい打ち合いの応酬がつづく。
うち勝ったのは、塩田だった。
斜めにうち、佐藤のわきをすりぬけ、コート右角へとバウンドするボール。
主審がコールする。
「40ー40! デュース!」
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