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デュースになったので、先に2ポイントとれば勝ちになる。塩田はレシーブ位置につき、佐藤のサーブを待った。
佐藤はコート外にいる部員にボールを要求し、2つ受けとると、再びコートを左右に分ける縦のラインにむかってうった。
塩田がそれをまっすぐに返し、そのままネットぎわまで走る。
佐藤はそのボールを空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球で打ち返した。
待っていたとばかりに後ろへと下がり、上からボールを打ち下ろす技をうつ塩田。
主審がコールする。
「40ーA! あと1ポイントで勝利!」
レシーブ位置に戻り、塩田はラケットを構える。
佐藤は再びコートの外へとおいだすように、|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打つ。
塩田がコートから離れてボールをおいかけ、空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球で返す。
その隙をつき、上からボールを打ち下ろす技をうつ佐藤。
主審がコールする。
「40ー40! 先に2ポイント先取した方が勝ち!」
再びコート外にボールを要求する佐藤。
ひとつをポケットにいれ、もうひとつを地面にバウンドさせる。
佐藤が1ポイント取り返したので、先に2ポイント先取した方が勝ちに戻る。
佐藤は集中した。
そしてボールをつかむと上へなげ、コートを左右に分ける縦のラインにむかってうつ。塩田は反応できず、ボールは真横を通りすぎる。
主審がコールする。
「Aー40! マッチポイント」
佐藤があと1ポイントとったら、佐藤の勝ち。塩田があと3ポイントとれば、塩田の勝ちである。
塩田はレシーブ位置につき、佐藤の動きを観察している。
佐藤は軽く地面にボールをバウンドさせてから、ボールを真上にあげ、コートを左右に分ける縦のラインにむかってうった。塩田がそれを斜めに打ち返し、ネットぎわへとつめる。
再び始まる、打ち合いの応酬。
塩田が斜めにノーバウンドでうつのに対して、佐藤はコートの縦の長さを決める奥のラインからまっすぐにうち返してくる。
せりあいに勝ったのは、塩田だった。
佐藤の足元をねらってボールをうち、股ぬきショットを決めた。
主審がコールする。
「40ー40! 先に2ポイント先取した方が勝ち!」
その後も拮抗したうちあいが続き、片方が1ポイントとりAを取ったら、もう片方が1ポイント取り返して先に2ポイント先取した方が勝ちに戻ったりをくり返した。
塩田は佐藤を左右上下に動かし、体力と集中力を削ろうとする。佐藤は塩田の足元や脇腹を通過させ、ミスショットを増そうとする。
5回目の先に2ポイント先取した方が勝ちになったとき、王子中の方から待ったがかかる。
佐藤がオーバーワークになっているから試合を中断してほしいと、部の顧問からストップがかかったのだ。
「勝負は次の都大会でつけましょう。ふたりともいいですね?」
口調は穏やかだが、有無を言わせぬ迫力がある言い方だ。不完全燃焼ながらも、ふたりはうなづいた。
こうして佐藤と塩田の対決は、都大会で決着をつけることになった。
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