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スクールにて
日がくれたころ、かまぼこ型の建物のなかで佐竹の声がひびく。
「塩田! コーチに個人レッスン、たのんだってマジ?」
レッスン後、コートわきでストレッチをしている塩田にかけよる佐竹。
「うん。佐藤のサーブ、すごくはやかったから。返球の練習と、確実にポイントをとれるようにサーブの練習しようと思って。
あと、体力的にも不安があるから、普段のルーティーンの見直しもしてもらうつもり」
佐竹はにっと笑い、塩田の肩に手をまわす。
「なんだよ、めっちゃやる気じゃん!
そんなに燃えた? 佐藤とのゲーム」
塩田の耳元ではなす佐竹に、ギャラリーがざわめき、ブーイングをもらす。そんなギャラリーを気にもとめずに、かみしめるように塩田がいった。
「うん。すごくドキドキした。
あいつに勝ちたいってすごくおもったよ」
真剣な塩田のようすに、はっとする佐竹。
「お前がそんな顔するなんて、よっぽどだな!」
バシッと塩田の背中をたたいてはなれる佐竹。
「応援するよ。お前、今までライバルらしいライバルいなかったしな!」
ははっと笑う佐竹。
「そんなことないよ。佐竹もライバルだと思ってるし……」
キラキラオーラをだしながら、佐竹にいいよる塩田。
「俺じゃ、あんな顔、塩田にさせられねーよ! 応援してるから、勝てよな、佐藤に!」
塩田のおでこにデコピンをくらわせると、佐竹は片手をふってコートをさった。
塩田はウェアのすそをにぎりしめる。
はじめてだった。自分と同じステージにいる人間が目の前に現れたのが。佐藤となら、もっと上を目指せるような予感がする。
ドキドキ、ヒリヒリするような、そんな少しおっかない、未知の領域にいけるんじゃないかという期待が、塩田のなかでどんどん膨れあ
がっていく。
「塩田。10分休憩したら、個人レッスン始めるぞー」
コートのなかにいたコーチが、塩田に声をかける。
「はい! よろしくお願いします!」
塩田は目をきらめかせながら、元気に返事した。
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