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テロリスト塩田と愉快な仲間たち
選手登録をすませ、指定されたコートへむかう塩田たち。指定されたコートをはさむように、階段状のスタンド席がふぞくしている場所にたどりつく。恋仲中側のスタンドには、すでにテニス部員が荷物をおき、それぞれ思い思いにすごしていた。腕章をつけた塩田ファンクラブのメンバーも上段部分に固まっていて、スタンドに塩田があらわれると黄色い声援があがる。何事かと塩田がみると、目があった何人かの女子がその場で失神した。
「塩田よ、またか。」
呆れたように、西宮が塩田をみた。
「えっ、あれも俺のせいになるの?」
カルチャーショックをうけている塩田。それを尻目に、西宮が説明する。
「あそこにいるのは、ファンクラブでの抽選があたった精鋭メンバーなんだ。
目があっただけでドッキュンコするのは、いたしかたないんだぞ! 塩田よ……!」
「いや、いくらなんでもそれはおかしいって!」
西宮につっこむ塩田。
そんな二人の前に、佐竹があらわれた。
「それがおかしくないんだなあ~。塩田は美形だから。おめめがまぶしい!」
両手で顔をおおう佐竹。なぜか涼しい顔をして、堂々と敵陣にいる。それをみて、塩田はおどろいた。
「佐竹! なんでこっち側にいるの?
……あとでテニス部に怒られない?」
「大丈夫。バレないように、こっそりきたから。それに俺、テニス部には入ってないから問題なし! だいじょぶ、だいじょぶ!」
「大丈夫なの、それは……。じゃあ逆に、うちのテニス部ににらまれたりはしない?」
心配そうにきく塩田に、佐竹はあっけらかんといった。
「スポドリのさしいれしたら、みんな快くうけいれてくれた!」
「わかりやすいワイロだ……。迷惑にならないように大人しくしてなよ」
塩田は呆れたようにため息をついた。
「だーいじょうぶだって! それに俺も、間近で塩田のこと応援したいしさ、いいじゃん!」
佐竹はぽんと、塩田の肩に手をおいた。
「そういわれると弱いな。……応援にきてくれてありがとう、佐竹」
うれしそうに微笑む塩田。それをみて、ファンクラブのメンバーが泣きながらそれを拝んでいた。そんな三人にかけよる人物がいた。副部長の宮前だ。
「部長、遅いですよ! 10分の遅刻です!」
「悪い! すべての責任は塩田がキラキラテロをおこしたせいだ。ゆるせ、副部長!」
両手をパンっと頭の上であわせて謝る、西宮。
「副部長さん?」
塩田が目をぱちくりさせて宮前にきいた。
「あっ、目がやられるっ! さすが噂になるほどのキラキラっぷりですね!」
両手で目をかばいながら、後ろへ数歩さがる宮前。
「噂になってるの!? ……ちなみに、どんな噂?」
ドキドキしながらきく塩田。
西宮が副部長と塩田の間に入っていった。
「塩田は顔面のよさで、人を失神させるプロだという噂だ!」
「ええ……? それ風評被害じゃ……」
塩田は佐竹、西宮、宮前の順で顔をみた。
全員、首を横にふった。
塩田はファンクラブの方をみた。
ファンクラブのメンバーも首を横にふった。
「あれ……? なんかみんな、口裏あわせてない?」
「いいかげん、現実をみろ。塩田よ……!」
西宮が佐竹とは反対側の肩にぽんと手をおいた。
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