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そしてはっとしてさけんだ。
「そうだ。塩田ァ! すっかり忘れていたが、今のうちにわが部のスタメンと顔あわせしとくかァ! まずは俺とダブルスをくんでいる副部長の宮前だ!」
宮前は両手で顔を隠したまま、話しだした。耳までまっかだ。
「副部長の宮前です……。前衛を担当してます……」
「塩田です。よろしくおねがいします」
さわやかにほほえむ塩田。それをみて、副部長の宮前は失神した。
「宮前ェ!」
宮前をだきかかえながらさけぶ、西宮。
「同性まで失神させるとは。塩田よ、すえ恐ろしい男だ……! だれかぁ! 宮前の看病たのむ!」
そこでいそいそと現れたのが、同じ顔をした坊主頭の二人だった。
「おお、磯山ツインズ! 面倒みてくれるか!」
ぱっと顔をあげ、うれしそうにいう西宮。
左側にいる坊主頭の男子がいった。
「みやっちがいないと、うちの部暴走しちゃうんで~。いいよ~!
それにしても、塩田くん。間近でみるとまじイケメン!」
右側にいる坊主頭もあいの手をいれる。
「そうそう。部長、すぐ暴走するからストッパーがいなくちゃね~!
そんでもって、まじ美形だわ。塩田くん」
双子にじろじろみられて、すこし困ったようにはにかむ塩田。それをみて、双子の意識がとんだ。
「磯山ツインズーぅ!」
西宮のさけびがあたりにひびく。
塩田の隣にいた佐竹が、真顔で塩田に耳うちする。
「塩田、塩田。手加減しろ……!」
「俺、ふつうにしてただけだし……」
そんな二人にむかって、西宮がさけんだ。
「塩田ァ! いいかげん、顔のよさを自覚しろ!」
「そんなこといわれても!」
「だれかぁ! ほかに看病できるやつはいないかぁ! そうだ、そこにいる田辺と赤星ィ! 手伝ってくれ!」
近くの席でストレッチをしていた二人に声をかける西宮。
黒ぶち眼鏡の優等生然とした男と、ロン毛をひとつに結んでいる男が渋々くる。
「塩田ァ、紹介しておく!
うちのテニス部のスタメンでシングルスプレイヤーの田辺と赤星だ。眼鏡の方が田辺で、ロン毛が赤星だ! ちなみに、坊主頭の磯山ツインズはダブルスだぞ! ひだりが小太郎でみぎが小次郎だ!」
西宮が昇天している坊主頭をさして紹介する。
その脇で、眼鏡の田辺が磯山ツインズの頭をじょりじょりしていた。
「えー、なんでこんなことに……」
ロン毛の赤星がものすごく面倒そうに、失神している3人をみた。
「赤星……だっけ。あの、ごめんね。なんか俺のせいみたいで。看病するの手伝うから、手をかしてくれないかな」
塩田は無意識に、すてられた子犬のような目で、赤星をみた。
赤星は、秒で倒れた。
それをみて、びくぅと肩をふるわせる田辺。
「田辺、いいか。お前まで倒れたらダメだ! そのままじょりじょりしてていいから、磯山ツインズの面倒を頼む! 俺は赤星と宮前を運ぶから、そっちは頼んだ!」
そういうと、西宮が抱き抱えていた宮前を近くのスタンド席の上におき、横に寝かせた。
田辺もじょりじょりしつつ頭を抱き、磯山ツインズの片方を持ち上げようとした。
「その持ち方だと首しめちゃうよ!?」
思わずつっこんでしまう塩田。田辺はびくぅと肩をふるわせた。
「あ、ごめんね。急に大声だして。俺も運ぶの手伝うよ」
少し困ったように笑う塩田に、田辺はびくぅと肩をふるわせながら失神した。
それをみた佐竹がつっこんだ。
「またかよ! 塩田、まじで自重しろ……!」
結局、佐竹と西宮が塩田をとめつつ、スタンド席へと失神しているメンバーを運び、横に寝かせたのだった。
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