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塩田はレギュラージャージに着替え、スタンド席に戻ってきた。スタンド席の上段部分に固まっていた、ファンクラブのメンバーが、黄色い声をあげる。
佐竹がそれに気づいて後ろを振り返り、塩田に向かって、軽く手をあげる。塩田もそれに合わせて手をあげる。
佐竹の左隣で、西宮が大声をだし、磯山ツインズの応援をしていた。
「いけー! 小次郎! 攻めてけ!」
身を乗り出して応援している西宮をみながら、塩田は佐竹の右隣に座った。
「佐竹、ただいま。試合どうなってる?」
「今、40-40で先に2ポイント先取した方が勝ちになってる! 磯山ツインズがA取ってて、あと1ポイント先取で4-3になる状況! 塩田も応援しようぜ。盛り上げてかなきゃな!」
戦況はあまり良いとは言えない状況だった。折角Aをとっても、その次に繋がらず先に2ポイント先取した方が勝ちに戻る。結局、このゲームは相手ペアがとった。
「あああ。おしい! あともう少しだったのに!」
西宮ががっくりと肩を落とす。
「お前たち、落ち込んでる場合じゃないよ! まだ3-4。挽回する道はいくらでもあるんだからね! しっかり応援しな!」
監督がレギュラー陣に、発破をかける。
「塩田! あんたも戻ったなら声だしな!」
「は、はい!」
こうして塩田も、磯山ツインズの応援に参加した。
ゲームをとられ、俄然、火がついた磯山ツインズ。そこからネット際につめ、二人横にならんでプレイするスタイルになった。
相手ペアにも果敢に攻め、何度か上からボールを打ち下ろす技も決めて、ポイントをとっていく。対する相手ペアも、ただ一方的にやられているというわけではなく、見事な連携プレーで応戦している。
コートの縦の長さを決める奥のラインの角を狙って、コーナーショットを決めている。
それをみて、右隣に座っている塩田にこっそり耳打ちする佐竹。
「超攻撃型の二人横にならんでプレイするスタイルだな。相手もよくあの早いテンポのノーバウンドで打ち返す技合戦に競り勝つよな。見てて胃がキリキリしてくるわ」
べっと舌を出す佐竹。そんな佐竹に耳打ちする塩田。
「確かにレベルが高い試合だよね。バドミントンやってただけあって、磯山ツインズ、反射神経がいいし。これはどっちが勝つかわからない試合だね」
「だな。どれだけ粘れるかの差で結果が決まりそうだな」
そんなふたりの後ろに立つ人物が。
「お前たち、声が出てないよ! おしゃべりしてないで、しっかり応援しな!」
監督である。塩田と佐竹の声がハモる。
「は、はい!」
しかし、塩田らの応援むなしく、磯山ツインズは5-7で負けた。
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