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ダブルス1
「あー! 負けたー!」
声をハモらせながら、磯山ツインズがスタンド席に戻ってきた。
磯山小太郎が、西宮に頭を下げる。
「すいません、ぎりぎり勝てませんでした!」
磯山小次郎が、宮前に頭を下げる。
「すいません、勝ってイーブンにしてください!」
西宮と宮前が顔を見合わせ、うなづく。
西宮が片手で親指をたてながら、言う。
「任せとけ! 1勝して一笑に付してやる!」
宮前が片手に握りこぶしを作って、言った。
「部長の言う通り! 勝って次に繋げます!」
磯山ツインズがハモりながら拍手した。
「おー!」
「これからダブルス1の試合を始めます。出場選手はコートにあつまってください」
審判のアナウンスが聞こえ、西宮と宮前がスタンド席からコートの中へと入っていった。
「ここで踏ん張って勝たないと、あとが厳しい。西宮と宮前、プレッシャーが半端ないだろうな、いま」
佐竹が、西宮・宮前ペアの背中を見送りながら言った。
「そうだね。だけど、勝つんじゃないかな。それだけの意気込みをもって、今まで練習してきたんだろうし」
塩田は祈るような気持ちで二人の背中をみる。
そして試合が始まった。
ラケットトスの結果、西宮・宮前ペアが返球する方になり、コートは変わらずそのままとなった。
レシーブ位置についた西宮が前屈みになり、くるくるとラケットの柄を回す。
サーブが打たれ、コートを左右に分ける縦のラインに沿うようにボールが弾む。西宮がそれをテンポよく打ち返した。前衛にいる宮前が西宮のフォローに入り、打ち返されたボールを
|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技で返してワンポイント先取した。西宮と宮前が片手でタッチする。
「やった!」
それをみていた塩田と佐竹も、その場でハイタッチする。
その後も拮抗した試合展開となった。
ポイントをとれば相手も取り返し、の繰り返しで、現状、30-30でポイントはイーブン。先に2ポイント先取した方が1ゲーム目をとる。
後衛の西宮と相手の後衛が打ち合っているなか、前衛にいる宮前がタイミングをみて割り込み、|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技を決める。
「おお、また決めた! 宮前、|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技の名手だな!」
佐竹が思わず腰を浮かせ、前のめりになって言う。
「あと1ポイント、頑張れー!」
塩田が声をはる。
サーブする側が有利とされるテニスで、相手サーブでの1ゲーム先取は、相手にプレッシャーを与えることができる。
「ここが決め時だね」
塩田が息をのんで西宮の背中を見守る。
相手は西宮と宮前の連携を崩そうと、|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打った。
ボールを追いかけて西宮がコートの外へ追いやられる。代わりにコートの真ん中に宮前が立ち、フォローに入った。
西宮がなんとか、そのボールを空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球で返す。
相手の前衛が上からボールを打ち下ろす技の体勢に入る。
コート内に戻ってきた西宮が上からボールを打ち下ろす技に備え、後方でラケットを構える。
相手の前衛が、左斜め後方に上からボールを打ち下ろす技を落とす。
それに合わせて西宮が動き、ボールを斜めに打つ。
内と外の縦のラインの間にボールがはねる。前衛にいる相手が慌てて打ち返すが、ボールをネットにぶつけて返球に失敗し、西宮・宮前ペアに1ポイント入った。
最初のゲームを先取したのは、西宮・宮前ペア。この調子で次のゲームも取りたいところだ。サーブを打つのは西宮である。
こんこんと軽く地面にボールをバウンドさせると、そのままボールを真上へあげ、ラケットでボールを打つ。しかし、ネットにボールがぶつかり、サーブミスをしてしまう。
「フォルト!」
主審がコールする。
「西宮! 落ち着いて打つんだよ!」
監督が声をはる。
西宮が後ろを振り返り軽くうなづくと、サーブを打った。
ボールはコートを左右に分ける縦のラインに沿うようにバウンドする。
相手がそれを打ち返し、前衛にいる宮前がノーバウンドで打ち返す技でそれを打ち返す。
しばらく前衛同士でノーバウンドで打ち返す技でのやりあいが続く。しかし宮前がボールを取りこぼしてしまい、相手にポイントが入ってしまう。
「ドンマイ!」
佐竹が声をはる。
その後も、ポイントをとったり取られたりして先に2ポイント先取した方が勝ちになった。
「ここで取っときたいよな。あー手が震える」
佐竹が前屈みになって両手を組む。
「決め時だね」
真剣な表情で西宮の背中をみる塩田。
しかし、西宮がサーブミスを二回立て続けにしてしまい、相手にポイントが入り、Aをとられてしまう。
「西宮、集中! まだ取り戻せるよ!」
監督が激をとばす。
フーッと深く呼吸してから、西宮はサーブを打った。
ボールは|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打たれ、地面を横にバウンドし、相手ペアの返球する人をコート外に追い出すことに成功する。
そのまま相手ペアの返球する人が反応できず、西宮・宮前ペアに1ポイント入る。再び先に2ポイント先取した方が勝ちになる。
「頑張れー! 西宮!」
塩田が叫ぶ。
「踏ん張れ! 部長!」
磯山ツインズが声をハモらせて応援する。
「ここでビシッと決めてやんな!」
監督も声をはる。
とんとんと軽く地面にボールをバウンドさせ、そのボールを真上に投げてサーブを打つ西宮。今度もボールは|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打ち、横へバウンドし、相手ペアの返球する人をコート外に追い出す。それに合わせてコート内に入る西宮。相手ペアの返球する人が空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球で返してくる。そのボールを後衛で構えていた西宮が上からボールを打ち下ろす技で打ち返す。
西宮・宮前ペアにポイントが入り、Aをとった。
あと1ポイントとれば、2ゲーム目も先取できる。緊迫するなか、西宮がサーブを打った。しかし、ネットにボールがぶつかり、再びサーブミスをしてしまう。
「フォルト!」
主審がコールする。
「西宮ー、緊張すんな! オメーは1人じゃねーんだからよー! 宮前を信じて打て!」
赤星がスタンド席から立ち上がって叫ぶ。
スタメンが、それぞれ西宮に声援をおくる。
西宮が手をあげ、それに答える。
ボールが宙を浮き、それをラケットで打ち落とす。ボールは内側にある縦のラインに沿ってまっすぐにはね、相手ペアの返球する人が早さに反応できなかった。
西宮・宮前ペアに1ポイント入り、2ゲーム目も先取する。コート内でハイタッチする、西宮・宮前ペア。
「やった!」
塩田も佐竹と、その場でハイタッチをして喜んだ。
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