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「いい流れが来てるね。この調子で勝ち越したいところだけど、まだまだ油断はできないな」
塩田がコートを見ながら言った。
「まだ2-0だし。あと4ゲーム取らないと勝てないし、ストレート勝ちさせてはくれないだろうな」
佐竹が真剣な眼差しでコートをみる。
それを聞いた監督が口を開く。
「まあ、ここが正念場だろうね。
だけどこんなところで負けるような、やわな鍛え方を、うちもしている訳じゃない。勝つよ、あの二人なら絶対!」
「信頼されてるんですね」
塩田がふわりと笑う。
「当たり前だ。うちの看板ペアをなめてもらっちゃ困るよ!」
3ゲーム目、相手の前衛がサーブする番になった。佐藤ほどではないが、早いサーブに苦戦する西宮・宮前ペア。
リターンミスが続き、3ゲーム目を落としてしまう。ゲームカウント、2-1。
4ゲーム目、宮前のサーブ。
地面にワンバウンドしたあと高く跳ね上がるサーブを打ち、相手のリターンミスを誘う。
順調にポイントを取り、30-0になった。
「いいぞ、その調子!」
赤星がスタンド席から立ち上がって、声をあげる。
磯山ツインズも、それぞれエールをおくる。
「頑張れー! 宮前!」
塩田も声をだして応援する。
宮前のサーブが火をふき、相手の返球する人がコートの外にボールを打ってしまい、アウトになった。
「40-0! いい感じじゃん!」
佐竹が嬉しそうに言う。
「まだ油断はできないけど、それでもあと1ポイントで1ゲームを取れる所まできたんだし、すごいよね。声だして応援しないと!」
塩田も自然と声が弾む。
そんな塩田をみて、黄色い声援をおくる塩田ファンクラブのメンバー。様式美である。
対面のスタンド席では、佐藤が中央にドンと座っていて、佐藤の前の席にレギュラー陣が横一列になって座っていた。
佐藤のファンは塩田ファンと同じく、上段のエリアに固まって統制のとれた応援を行っている。
それを見た佐竹が、感心したように言う。
「向こうの強火は統制がとれてるな。
塩田、統率力で佐藤に負けてるぞ」
「そうだね。本当にすごいよね、佐藤って」
同じく感心する塩田に、佐竹がつっこんだ。
「いやいや。素直に感心してないで、少しは塩田も見習えよ? 今日、何人失神させてんだって話だからな?」
「それは俺のせいじゃないと思う。」
少しすねたように言う塩田に、佐竹が呆れた。
「自覚のないイケメンほど、凶悪なものはないねぇ」
困ったように言う佐竹に、塩田が反論する。
「俺、そんなにイケメンでも美形でもないと思う」
佐竹は塩田のおでこに、デコピンをした。
「言ってろ!」
ふと笑う佐竹に、おでこを押さえながらもつられて笑う塩田。
強火ファンのブーイングを浴びながら、佐竹はコートへと目をやった。
宮前の高く跳ねるサーブを相手のサーブを打つ人が打ち損じ、危なげなく1ゲームを取ることが出来た。
「よっしゃ! 3-1!いいぞ、その調子だ!」
思わずガッツポーズをとってしまう赤星。
磯山ツインズはハイタッチをしている。
「祝福ムードのところ、水を指すようだけど、ここからが大事だからね!
西宮、宮前! 油断するんじゃないよ!」
監督が立ち上がり、声をはる。
西宮、宮前共に大きく頷いた。
そこからの展開は早かった。
5ゲーム目、サーブ権が一巡し、再び相手の後衛がサーブを打つことになった。
「頑張れー! 落ち着いて対応したら、取れるぞー!」
赤星が声をはる。
15-0、30-0、30-15、40-15、40-30と、順調にポイントを取ったり、取られたりして、あっという間に先に2ポイント先取した方が勝ちになった。
「このゲームを取ったら、ゲームカウント4-1になるな。そうなってくると、勝利も射程内に入ってくる。決め時だな」
佐竹がごくりとつばを飲み込んだ。
最初にAを取ったのは、西宮・宮前ペアだった。
しかし、次のリターンでネットにボールをぶつけてしまい、先に2ポイント先取した方が勝ちに戻る。
しかし、相手のサーブする人がサーブミスを2回続けてしてしまい、再び
西宮・宮前ペアがAを取った。
相手のサーブをする人は|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》にボールを打ち、西宮をコート外に追い出した。それをなんとか打ち返す西宮と、そのフォローに入る宮前。ネット際、前衛同士でノーバウンドで打ち返す技でのやりあいが続き、宮前がそれに競り勝った。
「よっしゃ、4-1! ここまで来たら、絶対勝てよ! 西宮、宮前!」
赤西が大声で叫んでいる隣で、田辺が控えめに拍手をしていた。
6ゲーム目、再び西宮のサーブ。
何度かサーブミスがあったものの、なんとか1ゲームを取る西宮・宮前ペア。ゲームカウント5-1。西宮・宮前ペアが優勢な状況でゲームが進んでいた。しかし、7ゲーム目。再び早いサーブを打つ相手の前衛がサーブを打つことになった。リターンミスが増え、サーブに苦戦する西宮・宮前ペア。
粘ったものの、ゲームを落としてしまう。
ゲームカウント、4-2。
8ゲーム目。再び宮前が、高く跳ねるサーブを打つ番となった。
危なげなく、西宮・宮前ペアがゲームを取り、ゲームカウント5-2。次の1ゲームを西宮・宮前ペアが取れば、1勝でき、イーブンになる。
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