ダブルス1

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「いい流れが来てるね。この調子で勝ち越したいところだけど、まだまだ油断はできないな」 塩田がコートを見ながら言った。 「まだ2-0だし。あと4ゲーム取らないと勝てないし、ストレート勝ちさせてはくれないだろうな」 佐竹が真剣な眼差しでコートをみる。 それを聞いた監督が口を開く。 「まあ、ここが正念場だろうね。 だけどこんなところで負けるような、やわな鍛え方を、うちもしている訳じゃない。勝つよ、あの二人なら絶対!」 「信頼されてるんですね」 塩田がふわりと笑う。 「当たり前だ。うちの看板ペアをなめてもらっちゃ困るよ!」 3ゲーム目、相手の前衛がサーブする番になった。佐藤ほどではないが、早いサーブに苦戦する西宮・宮前ペア。 リターンミスが続き、3ゲーム目を落としてしまう。ゲームカウント、2-1。 4ゲーム目、宮前のサーブ。 地面にワンバウンドしたあと高く跳ね上がるサーブを打ち、相手のリターンミスを誘う。 順調にポイントを取り、30-0になった。 「いいぞ、その調子!」 赤星がスタンド席から立ち上がって、声をあげる。 磯山ツインズも、それぞれエールをおくる。 「頑張れー! 宮前!」 塩田も声をだして応援する。 宮前のサーブが火をふき、相手の返球する人(レシーバー)がコートの外にボールを打ってしまい、アウトになった。 「40-0! いい感じじゃん!」 佐竹が嬉しそうに言う。 「まだ油断はできないけど、それでもあと1ポイントで1ゲームを取れる所まできたんだし、すごいよね。声だして応援しないと!」 塩田も自然と声が弾む。 そんな塩田をみて、黄色い声援をおくる塩田ファンクラブのメンバー。様式美である。 対面のスタンド席では、佐藤が中央にドンと座っていて、佐藤の前の席にレギュラー陣が横一列になって座っていた。 佐藤のファンは塩田ファンと同じく、上段のエリアに固まって統制のとれた応援を行っている。 それを見た佐竹が、感心したように言う。 「向こうの強火は統制がとれてるな。 塩田、統率力で佐藤に負けてるぞ」 「そうだね。本当にすごいよね、佐藤って」 同じく感心する塩田に、佐竹がつっこんだ。 「いやいや。素直に感心してないで、少しは塩田も見習えよ? 今日、何人失神させてんだって話だからな?」 「それは俺のせいじゃないと思う。」 少しすねたように言う塩田に、佐竹が呆れた。 「自覚のないイケメンほど、凶悪なものはないねぇ」 困ったように言う佐竹に、塩田が反論する。 「俺、そんなにイケメンでも美形でもないと思う」 佐竹は塩田のおでこに、デコピンをした。 「言ってろ!」 ふと笑う佐竹に、おでこを押さえながらもつられて笑う塩田。 強火ファンのブーイングを浴びながら、佐竹はコートへと目をやった。 宮前の高く跳ねるサーブを相手のサーブを打つ人(レシーバー)が打ち損じ、危なげなく1ゲームを取ることが出来た。 「よっしゃ! 3-1!いいぞ、その調子だ!」 思わずガッツポーズをとってしまう赤星。 磯山ツインズはハイタッチをしている。 「祝福ムードのところ、水を指すようだけど、ここからが大事だからね! 西宮、宮前!  油断するんじゃないよ!」 監督が立ち上がり、声をはる。 西宮、宮前共に大きく頷いた。 そこからの展開は早かった。 5ゲーム目、サーブ権が一巡し、再び相手の後衛がサーブを打つことになった。 「頑張れー! 落ち着いて対応したら、取れるぞー!」 赤星が声をはる。 15-0、30-0、30-15、40-15、40-30と、順調にポイントを取ったり、取られたりして、あっという間に先に2ポイント先取した方が勝ち(デュース)になった。 「このゲームを取ったら、ゲームカウント4-1になるな。そうなってくると、勝利も射程内に入ってくる。決め時だな」 佐竹がごくりとつばを飲み込んだ。 最初にA(アドバンテージ)を取ったのは、西宮・宮前ペアだった。 しかし、次のリターンでネットにボールをぶつけてしまい、先に2ポイント先取した方が勝ち(デュース)に戻る。 しかし、相手のサーブする人(サーバー)がサーブミスを2回続けてしてしまい、再び 西宮・宮前ペアがA(アドバンテージ)を取った。 相手のサーブをする人(サーバー)は|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》にボールを打ち、西宮をコート外に追い出した。それをなんとか打ち返す西宮と、そのフォローに入る宮前。ネット際、前衛同士でノーバウンドで打ち返す技(ボレー)でのやりあいが続き、宮前がそれに競り勝った。 「よっしゃ、4-1! ここまで来たら、絶対勝てよ! 西宮、宮前!」 赤西が大声で叫んでいる隣で、田辺が控えめに拍手をしていた。 6ゲーム目、再び西宮のサーブ。 何度かサーブミスがあったものの、なんとか1ゲームを取る西宮・宮前ペア。ゲームカウント5-1。西宮・宮前ペアが優勢な状況でゲームが進んでいた。しかし、7ゲーム目。再び早いサーブを打つ相手の前衛がサーブを打つことになった。リターンミスが増え、サーブに苦戦する西宮・宮前ペア。 粘ったものの、ゲームを落としてしまう。 ゲームカウント、4-2。 8ゲーム目。再び宮前が、高く跳ねるサーブを打つ番となった。 危なげなく、西宮・宮前ペアがゲームを取り、ゲームカウント5-2。次の1ゲームを西宮・宮前ペアが取れば、1勝でき、イーブンになる。
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