ダブルス1

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「次のサーブは、相手の後衛が打つんだよね。今のところ、先に2ポイント先取した方が勝ち(デュース)になっても競り合ってるサーブを打つ人(サーバー)だから、油断はできないね」 塩田が真剣な目でコートを見守る。 「早ければ、次のゲームで決まるな。 あー、なんか緊張してきた!」 佐竹が顔を手でおおう。 監督が激をとばす。 「ここまで来たら、勝つしかないよ! 幸い今は勝ち越してるし、油断せずにいけば勝てる相手だ! 負けたりしたら、承知しないからね!」 9ゲーム目。相手はコートを左右に分ける縦のライン(センターサービスライン)に沿うようにボールを打った。 それに反応して、西宮が斜め(クロス)に打ち返す。しばらく後衛同士で斜め(クロス)に打ち合っていたが、宮前が間に割り込み、|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す(アングルボレー)で決めた。 西宮・宮前ペアに1ポイント入る。 15-0。 その後も、宮前の|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す(アングルボレー)を警戒しつつも、相手の後衛が上からボールを打ち下ろす技(スマッシュ)を打ってポイントを取ったり、逆に西宮がコーナーショットを決めて、ポイントを取り返したりした。 接戦のなか先に2ポイント先取した方が勝ち(デュース)になり、相手の後衛がサーブを打った。|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打たれたボールは、コートの外へとバウンドし、西宮はその後を追ってコートから離れる。なんとか空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球(ロブ)で打ち返し、コートに戻る西宮。相手の前衛が上からボールを打ち下ろす技(スマッシュ)の体制に入り、西宮も宮前もそれに備える。 強烈な上からボールを打ち下ろす技(スマッシュ)が決まり、相手ペアが先にA(アドバンテージ)を取った。 「くそー! ここに来て上からボールを打ち下ろす技(スマッシュ)か。勝利まで、あと2ポイントなのになあ」 悔しがる佐竹に、塩田が言った。 「佐竹。俺たちに今できることは、応援することだよ。声だしてこ!」 佐竹の背中を軽く叩く塩田。 「おう。そうだな!」 佐竹は頷くとコートに向きなおり、声をはる。 「西宮、宮前! あと2ポイント、頑張れー!」 それに対し、片手をあげる西宮と宮前。 「集中、集中! まだゲームは終わってないからね!」 監督も激をとばす。 再び相手の後衛がサーブを打った。|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打たれたボールは、コートの外へとバウンドし、西宮はコートから離れる。斜め(クロス)になんとか打ち返し、相手の前衛がそれをノーバウンドで打ち返す技(ボレー)で返した。前衛同士のノーバウンドで打ち返す技(ボレー)合戦に突入し、宮前がなんとかそれに競りかって、デュースに戻る。 「あと1ポイントで勝利(マッチポイント)だよ! 気合いを入れな!」 監督が声をはる。 スタンド席から、スタメンがそれぞれ、思い思いに応援している。 「西宮ー! 勝てー!」 赤西が吠えるなか、相手の後衛がサーブを打った。コートを左右に分ける縦のライン(センターサービスライン)に沿うようにボールが弾む。西宮がそれをとらえ、相手の前衛の足元へと強烈なショットを繰り出す。相手の前衛は反応できず、後衛がそのフォローをしたが、ネットにボールをぶつけてしまう。 その瞬間、審判がコールし、西宮・宮前ペアが勝利した。 西宮と宮前が片手でグータッチする。 「やったぁ!」 塩田と佐竹も、その場でハイタッチする。 握手を終え、西宮と宮前がスタンド席に戻ってきた。磯山ツインズが、それぞれ西宮と宮前に抱きついた。 「西宮部長ー! まじかっけーっす!」と、小太郎。 「惚れちゃいます、みやっち副部長!」と、こっちは小次郎。 「まぁな! 勝つといったら勝つ男、それが俺たちゴールデンペアだ!」 ぬははと腰に手を当てて、ふんぞり返る西宮。 それをみて、釘を指す宮前。 「あまりいい気になってちゃ、ダメですよ。今、1勝1敗。イーブンなんですから! 田辺くん、この調子でシングルス3、お願いします!」 田辺は無言で頷くと、静かにコートへ入っていった。 「これからシングルス3の試合を始めます。出場選手はコートにあつまってください」 審判のコールのなか、次の試合が始まる。
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