16人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「次のサーブは、相手の後衛が打つんだよね。今のところ、先に2ポイント先取した方が勝ちになっても競り合ってるサーブを打つ人だから、油断はできないね」
塩田が真剣な目でコートを見守る。
「早ければ、次のゲームで決まるな。
あー、なんか緊張してきた!」
佐竹が顔を手でおおう。
監督が激をとばす。
「ここまで来たら、勝つしかないよ!
幸い今は勝ち越してるし、油断せずにいけば勝てる相手だ! 負けたりしたら、承知しないからね!」
9ゲーム目。相手はコートを左右に分ける縦のラインに沿うようにボールを打った。
それに反応して、西宮が斜めに打ち返す。しばらく後衛同士で斜めに打ち合っていたが、宮前が間に割り込み、|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技で決めた。
西宮・宮前ペアに1ポイント入る。
15-0。
その後も、宮前の|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技を警戒しつつも、相手の後衛が上からボールを打ち下ろす技を打ってポイントを取ったり、逆に西宮がコーナーショットを決めて、ポイントを取り返したりした。
接戦のなか先に2ポイント先取した方が勝ちになり、相手の後衛がサーブを打った。|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打たれたボールは、コートの外へとバウンドし、西宮はその後を追ってコートから離れる。なんとか空高く上がり、ゆみなり落ちてくる球で打ち返し、コートに戻る西宮。相手の前衛が上からボールを打ち下ろす技の体制に入り、西宮も宮前もそれに備える。
強烈な上からボールを打ち下ろす技が決まり、相手ペアが先にAを取った。
「くそー! ここに来て上からボールを打ち下ろす技か。勝利まで、あと2ポイントなのになあ」
悔しがる佐竹に、塩田が言った。
「佐竹。俺たちに今できることは、応援することだよ。声だしてこ!」
佐竹の背中を軽く叩く塩田。
「おう。そうだな!」
佐竹は頷くとコートに向きなおり、声をはる。
「西宮、宮前! あと2ポイント、頑張れー!」
それに対し、片手をあげる西宮と宮前。
「集中、集中! まだゲームは終わってないからね!」
監督も激をとばす。
再び相手の後衛がサーブを打った。|サーブが打てる範囲内の外角側《ワイド》に打たれたボールは、コートの外へとバウンドし、西宮はコートから離れる。斜めになんとか打ち返し、相手の前衛がそれをノーバウンドで打ち返す技で返した。前衛同士のノーバウンドで打ち返す技合戦に突入し、宮前がなんとかそれに競りかって、デュースに戻る。
「あと1ポイントで勝利だよ! 気合いを入れな!」
監督が声をはる。
スタンド席から、スタメンがそれぞれ、思い思いに応援している。
「西宮ー! 勝てー!」
赤西が吠えるなか、相手の後衛がサーブを打った。コートを左右に分ける縦のラインに沿うようにボールが弾む。西宮がそれをとらえ、相手の前衛の足元へと強烈なショットを繰り出す。相手の前衛は反応できず、後衛がそのフォローをしたが、ネットにボールをぶつけてしまう。
その瞬間、審判がコールし、西宮・宮前ペアが勝利した。
西宮と宮前が片手でグータッチする。
「やったぁ!」
塩田と佐竹も、その場でハイタッチする。
握手を終え、西宮と宮前がスタンド席に戻ってきた。磯山ツインズが、それぞれ西宮と宮前に抱きついた。
「西宮部長ー! まじかっけーっす!」と、小太郎。
「惚れちゃいます、みやっち副部長!」と、こっちは小次郎。
「まぁな! 勝つといったら勝つ男、それが俺たちゴールデンペアだ!」
ぬははと腰に手を当てて、ふんぞり返る西宮。
それをみて、釘を指す宮前。
「あまりいい気になってちゃ、ダメですよ。今、1勝1敗。イーブンなんですから!
田辺くん、この調子でシングルス3、お願いします!」
田辺は無言で頷くと、静かにコートへ入っていった。
「これからシングルス3の試合を始めます。出場選手はコートにあつまってください」
審判のコールのなか、次の試合が始まる。
最初のコメントを投稿しよう!