シングルス3

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塩田ファンクラブのメンバーをうしろにひきつれ、塩田は会場内を走り始める。しばらく走ると、一列に長く列を作った集団の、最後尾にでくわした。塩田はその列の横につき、ぐんぐんと相手をぬいていき、あっという間に先頭までたどりつく。そこにいたのは佐藤だった。 「やっぱり佐藤だ! アップしてるの?」 佐藤の隣について、声をかける塩田。 「ああ。塩田もアップか?」 頷く塩田に、フッと笑う佐藤。 「決着まだついてねーけど。今回は俺が勝たせてもらう!」 佐藤が塩田をおいて、ずんずんと前に進んでいく。その後を慌てておいかける塩田。佐藤の横につく。 「俺だって負けない! 対策だってしてきたんだ。勝たせてもらうよ!」 言って佐藤をおいていく塩田。 佐藤が慌ててその後をおい、塩田の横につく。 「言うねぇ。俺、つえーけど。」 ちらりと塩田を横目でみる佐藤。 並走する塩田。 「しってる。けど、俺だって、負けない!」 佐藤の横顔に向かって言いきる塩田に、佐藤はくはっと笑った。 「いいねぇ。嫌いじゃねーよ、その負けん気」 「俺もやるときはやるから!」 「それは俺も一緒。楽しもーぜ!」 お互いの視線がぶつかり、フッと笑いあうふたり。そのまま並走する2本の長い列。 佐藤がふと言った。 「どうせアップするなら、一緒にしねぇ?」 「しないよ。佐藤の調子、あげるだけだし」 塩田は佐藤をおいぬかして右へと曲がり、佐藤とは別の方向へ行った。その後をぞろぞろと、塩田ファンクラブのメンバーがついていく。 「つれないねぇ。ま、そこもやりがいがあっていいんだけど」 佐藤はぼぞっとつぶやくと、塩田とは反対方向の左側へと曲がった。 その後をぞろぞろと佐藤ファンクラブのメンバーがついていく。 こうしてふたりの会合が終わった。
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