シングルス3

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「ああっ! 肝心なところでまたゲームをとられた!」 頭を抱える佐竹に、西宮が親指をたてて笑う。 「田辺のミラーテニスの進化は、後ひとつある!」 「進化……とは。」 「見てればわかる!」 説明になってないセリフを残して、西宮は再びコートに目をやった。 田辺のサーブで始まったゲーム。打った場所は真逆の方向。相手がそれに合わせて返球すると、真逆の方向に打ち返す田辺。相手がなんとか追い付いて打ち返す。そのまま反対方向へと進む、対戦相手。しかし、同じ場所に田辺が打ち返し、ボールを取り損ねてしまう。 「あれ? リターンに少しバリエーションが出来てる?」 塩田がぞろぞろと強火のファンを引き連れて、恋仲中のスタンド席に帰ってきた。 「塩田!」 嬉しそうに塩田を迎える、佐竹。 塩田ファンクラブのメンバーは肩で息をしていて、死屍累々だ。 スタンド席の最上段へと戻り、へたっている。 「塩田。アップ、激しかったのか?」 塩田はキョトンとして、言った。 「そんなことないよ。軽く流して走った後、簡単なボレーやサーブ、スマッシュ練したぐらいかな」 佐竹はファンクラブのメンバーをみて、頷いた。 「なるほど、結構なスピードで走ったんだな……」 「そんなことないけど」 笑いながら塩田は、佐竹の右隣に座った。 「試合はどんな感じ?」 「見ての通り接戦。一応、5-4で勝ち越してる。ここで勝てば、塩田の番で勝敗が決まるから、緊張する一戦だよな! 精一杯応援して、勝てるように祈っとこうぜ」 にっと笑う佐竹。 「そうだね。ここで勝ってくれると、気持ち的に楽になるし、モチベも上がるかな」 汗拭きシートで汗をぬぐいながら、塩田が言う。視線はコートの中へと移る。
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