シングルス2

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それを聞いたスタンド席では。 「ああー! 先に2ポイント先取した方が勝ち(デュース)に戻ってしまった~!」 西宮が頭を抱える。 その横で神妙な顔で宮前が言った。 「塩田さん、ゴリゴリ体力削られてますね。両手打ちになってる……」 佐竹がそれに口を挟む。 「実際、佐藤のボールを打った身としては、当然の対処だと思う。ボールが重すぎて、片手で打ってたら手首痛めるからな。片手であの打球を打ってくる佐藤が化けもんなんだよ」 べっと舌を出す佐竹。 監督が腕を組みながら言った。 「とはいえ、まだ本調子ではない佐藤相手に、どれだけポイントを先取れるかが重要なところだよ。今のままだと粘り負けしてしまう。塩田にも気合いをいれて粘ってもらわなきゃいけないねぇ」 佐竹がげんなりして肩を落とす。 「本調子じゃないのに、あんな重い球を打てる佐藤がおかしいんだよ。弱点らしい弱点もないし、塩田もどう攻めればいいか悩んでるだろうな」 佐竹の言葉に、スタンド席の空気が重くなる。 監督がパンパンと手を叩き、言った。 「そこは塩田の実績を信じて応援するしかないよ! ほらほら、落ち込んでないで声だしてきな!」 そんなやり取りがされているとは露知らず、塩田はかつてないほどの集中力を発揮していた。 周囲の雑音は聞こえず、ただボールが弾む音や打球音だけが聞こえる。佐藤の動きも心なしかゆっくりに見える。 ーーいける! 塩田はボールを真上にあげ、サーブを打った。
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