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佐藤はサーブ位置につくと、ボールパーソンからボールをふたつもらう。
一方をズボンのポケットにいれ、もうひとつを地面にバウンドさせて手にボールを馴染ませる。数回バウンドさせてから、ボールを真上にあげた。
打った、と思ったときには相手コートの地面をバウンドし、塩田に向かってボールが飛んでいく最中だった。
塩田は佐藤のサーブの早さを警戒して、コートの縦の長さを決める奥のラインより1メートルくらいさがったポジションでラケットを構えていた。なので、なんとか両手打ちで相手コートの真ん中に打ち返す事に成功した。佐藤はそれを、ネット際にいく途中にノーバウンドで打ち返し、ネット前につく。
佐藤のドライブボレーに対応し、塩田はコートの縦の長さを決める奥のラインから、斜めに打ち返した。それを|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技で打ち返す佐藤。塩田は対応できず、佐藤のポイントになった。
審判がコールする。
「15-0!」
佐藤は再び、サーブ位置についた。
ボールを真上にあげ、サーブを打つ。
あっという間に相手コートのサーブが打てる範囲内をバウンドし、まっすぐに塩田に向かってボールが飛んでいった。塩田はそれを打ち返したが、ボールがネットに引っ掛かってしまう。
「30-0!」
審判のコールがコート内に響く。
スタンド席でそれをみていた佐竹が言った。
「そろそろ、ボーナスステージがなくなりそうだな。塩田、無茶せずにマイペースに攻めれるといいけど……」
「それはなかなか難しいと思う」
ぽそっと田辺がそれに反応した。
「どういうこと?」
身を乗り出して田辺の方を向く佐竹に、若干ひきぎみになりながらも田辺が答えた。
「俺も公式戦で戦ったことあるけど、あの超速いサーブとネット際での攻防の強さから、なかなか点がとれなくなってくる。塩田くんも頑張ってるけど、エンジンかかってきた佐藤くんに勝てるかどうかはわからない」
表情を曇らせる田辺に、西宮が真剣な顔で頷いた。
「確かにな。塩田はパワーと体力面では佐藤に劣る。代わりに技術面と、知識では塩田に分がある。どっちが勝つか、まだわからん! だから、俺たちはまず、全力で応援すべきだとは思わんか! 塩田ファンクラブを見習いたまえ! ポイントがとられても応援する手を止めない! 我々もこうあるべきじゃあないだろうか!」
佐竹が頷く。
「だな。前回もいい感じで戦ってたし、まだ負けるとは決まってないよな!」
佐竹に続いて赤星も頷いた。
「ま、しゃーないから応援すっか!」
宮前が明るく言う。
「そうですね、まずはできるところから、ですね! 幸い、まだ勝ち越しているので、このまま逃げ切れれば我々の勝ちです。もし負けても、赤星君がいますし、前向きに応援しましょう!」
「おー!」
磯山ツインズが両手をあげてハモる。
それをみていた監督が、手をパンパンと叩いて叫んだ。
「あんたたち! お喋りしてないで塩田を応援しな! ゲームは進んでるんだよ!」
監督に言われ、返事をするスタメンと佐竹。
コートへと目をやると、ちょうどラリーが続いているところだった。
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