シングルス2

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佐藤はサーブ位置につくと、ボールパーソンからボールをふたつもらう。 一方をズボンのポケットにいれ、もうひとつを地面にバウンドさせて手にボールを馴染ませる。数回バウンドさせてから、ボールを真上にあげた。 打った、と思ったときには相手コートの地面をバウンドし、塩田に向かってボールが飛んでいく最中だった。 塩田は佐藤のサーブの早さを警戒して、コートの縦の長さを決める奥のライン(ベースライン)より1メートルくらいさがったポジションでラケットを構えていた。なので、なんとか両手打ちで相手コートの真ん中に打ち返す事に成功した。佐藤はそれを、ネット際にいく途中にノーバウンドで打ち返し、ネット前につく。 佐藤のドライブボレーに対応し、塩田はコートの縦の長さを決める奥のライン(ベースライン)から、斜め(クロス)に打ち返した。それを|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す(アングルボレー)で打ち返す佐藤。塩田は対応できず、佐藤のポイントになった。 審判がコールする。 「15-0!」 佐藤は再び、サーブ位置についた。 ボールを真上にあげ、サーブを打つ。 あっという間に相手コートのサーブが打てる範囲(サービスコート)内をバウンドし、まっすぐに塩田に向かってボールが飛んでいった。塩田はそれを打ち返したが、ボールがネットに引っ掛かってしまう。 「30-0!」 審判のコールがコート内に響く。 スタンド席でそれをみていた佐竹が言った。 「そろそろ、ボーナスステージがなくなりそうだな。塩田、無茶せずにマイペースに攻めれるといいけど……」 「それはなかなか難しいと思う」 ぽそっと田辺がそれに反応した。 「どういうこと?」 身を乗り出して田辺の方を向く佐竹に、若干ひきぎみになりながらも田辺が答えた。 「俺も公式戦で戦ったことあるけど、あの超速いサーブとネット際での攻防の強さから、なかなか点がとれなくなってくる。塩田くんも頑張ってるけど、エンジンかかってきた佐藤くんに勝てるかどうかはわからない」 表情を曇らせる田辺に、西宮が真剣な顔で頷いた。 「確かにな。塩田はパワーと体力面では佐藤に劣る。代わりに技術面と、知識では塩田に分がある。どっちが勝つか、まだわからん! だから、俺たちはまず、全力で応援すべきだとは思わんか! 塩田ファンクラブを見習いたまえ! ポイントがとられても応援する手を止めない! 我々もこうあるべきじゃあないだろうか!」 佐竹が頷く。 「だな。前回もいい感じで戦ってたし、まだ負けるとは決まってないよな!」 佐竹に続いて赤星も頷いた。 「ま、しゃーないから応援すっか!」 宮前が明るく言う。 「そうですね、まずはできるところから、ですね! 幸い、まだ勝ち越しているので、このまま逃げ切れれば我々の勝ちです。もし負けても、赤星君がいますし、前向きに応援しましょう!」 「おー!」 磯山ツインズが両手をあげてハモる。 それをみていた監督が、手をパンパンと叩いて叫んだ。 「あんたたち! お喋りしてないで塩田を応援しな! ゲームは進んでるんだよ!」 監督に言われ、返事をするスタメンと佐竹。 コートへと目をやると、ちょうどラリーが続いているところだった。
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