佐藤と塩田

シングルス2

ポイントはちょうど40-0。
塩田がリターンミスにより1ポイントを落としていた。
今ラリーをしている、この１ポイントをとられると、佐藤が1ゲームとることになる。公式戦は先に６ゲーム取った方が勝ちになるから、この1ゲームを佐藤にとられて、完全復活させるわけにはいかない。塩田は内心焦っていた。
斜め(クロス)で打ち合っているふたりにかけられる応援の声がコートに響く。
先に動いたのは塩田だった。
斜め(クロス)で打ち合ってた所に、時々まっすぐ(ストレート)に打ち返す方法を取り入れはじめたのだ。佐藤を左右に動かし、体力を落とさせる作戦らしい。
佐藤は前には行けずに左右にボールを追っている。しばらくしたのち、リターンミスをしたのは佐藤だった。ネットにボールを打ってしまう。
審判がコールする。
「40-15! 」
佐藤は再び、サーブ位置につく。
ボールパーソンからボールをふたつもらうと、一方をズボンのポケットにいれ、もう一方で地面をついた。そのまま数回ついたあと、真上へと投げる。あっという間にネットを越え、地面をバウンドし、塩田へと向かってボールが飛んでいく。
塩田がそれを斜め(クロス)に返すと、佐藤はネット際に走り、|縦のライン方向に角度をつけてノーバウンドで打ち返す技(アングルボレー)を決めた。
これで、佐藤が1ゲーム取り返した。
「ゲームカウント、1-2!」
審判のコールがコートに響く。