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その頃、スタンド席では。
「ああー! 先に3ゲーム取られちゃいましたよ! エンジンがかかってきましたね、佐藤くん!」
あわわと目を白黒させながら言う宮前に、監督がチョップを食らわした。
「落ち着きな! あんたらは塩田を信じられないのかい? あの負けず嫌いな塩田が必死に佐藤に食らいついてるのに、応援する側がアワアワしてる場合じゃないよ!」
宮前が頭を押さえながら謝った。
「すいません、つい。本当に実力が拮抗していると、こんな風にはらはらするもんなんだなと思いました。今まで佐藤くんが頭ひとつ抜けてるとは思ってましたが、この試合をみて改めて僕らじゃ相手にならないことがわかりました。塩田くんレベルで苦戦するなんて、本当に化け物ですね、彼は。それに食らいついている塩田くんもすごいです」
「塩田はプロ、目指してるからなー!
並々ならぬモチベーションがあるわけだよ」
佐竹がコートから目をそらさずに言った。
「そんな塩田が佐藤に苦戦しまくってるのをみるのは、胃が痛いな。誰か胃薬持ってない?」
佐竹の懇願に、宮前がつっこんだ。
「どこぞのサラリーマンみたいに、中学生がそんなの普段から持ち歩いているわけないじゃないですか」
「やっぱり?」
にっと笑って返す佐竹。
赤星がその場で立ち上がりながら言った。
「もっとスタートダッシュが効くと思ってたんだがな。監督、念のため、俺もアップしときます」
監督がそれに頷く。
「わかった。いざという時には頼むよ!」
「任せてください!」
赤星はにっと笑いながら、スタンド席から姿を消した。
「まだ負けるって決まった訳じゃないのにー。せっかちだなあ」
ふうとため息をつきながら、佐竹は赤星の背中を見送った。
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