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「それじゃ、塩田、いくぞ~!」
佐竹がコートの縦の長さを決める奥のラインを前にして立ち、塩田に手をふる。それを受けて、塩田も佐竹に手をふりかえす。
それをみた佐竹は、ふわりと空中にボールをなげる。ボールを手でさすようにかまえて、ラケットでそれを打つ。相手コートのサーブが打てる範囲内でワンバウンドしたボールを、塩田が打ちかえす。
佐竹がいる反対側へボールがバウンドし、佐竹はそれを打ちかえせず、塩田に点がはいった。
「イン! 0-15!」
佐竹のコールにわく、ギャラリー。
サーブ位置について、佐竹はふたたびボールを打った。
サーブが打てる範囲内の外角側、ぎりぎりをねらう。
上手くインして、ボールがコートの外へ流れるようにワンバウンドする。
塩田はボールがはねたさきに移動し、ラケットをかまえて待っていた。きれいなフォームで対面コートの角へと打ちかえす。
そこへなんとかすべりこんできた佐竹が、ラケットをもつ手をのばして、ワンバウンドで返す。
ボールはネットぎりぎりをこえ、そのままネットしたに落ちそうになった。塩田がそれをラケットでひろい、ノーバウンドで相手コートのネットぎわにかえす。みごとなドライブボレーがきまり、ギャラリーの声援とともに、拍手がコートにひびいた。
「くそー! 0-30!」
佐竹がコールし、コートにころがっているボールをラケットでひろう。今度はコートを左右に分ける縦のラインぎりぎりへ強めに打ち、ネットぎわにつめる佐竹。
塩田は佐竹がいる方角へ強めに打ちかえし、しばらくラリーがつづいた。そして、ほどよいころあいで、塩田がしかける。ネットぎわにつめていた佐竹の頭をとおりこし、コートの縦の長さを決める奥のラインにゆみなりな軌道をえがいてボールが落ちた。
「イン! ここにきてロブかよ!」
佐竹がボールをとりにコートの縦の長さを決める奥のラインへとさがる。ラケットでボールをひろうと、佐竹はふたたびコールした。
「0-40! マッチポイント!」
佐竹はひろったボールをバウンドさせながら、どう攻めるか考えていた。
あと1ポイントとられたら負けになる。せめて1ポイント、相手からとって見返したい。
佐竹はふたたび、コートを左右に分ける縦のラインギリギリへ強めに打ち、ネットぎわにつめた。
塩田はそれを、まっすぐに打ち返した。
佐竹はそれを読んでいて、塩田がいる反対側へとボールを返す。
塩田は佐竹がボールを打つ瞬間、その場でかるくジャンプをして、かかとを上げ、軽やかなステップで反対側までいくと、ラケットをかまえ、打ち返す。佐竹が再びネットぎわにボールを落とすと、塩田はそれをひろって、ロブを上げる。佐竹の頭の上を、ゆみなりに大きな軌道をえがいてボールがとおりすぎようとしている。佐竹も負けじとその場で高くジャンプし、ふりおろすようにボールを上からたたき落とした。地面にはね、大きくバウンドするボールを前に塩田はラケットをかまえ、コートの角めがけて上からボールを打ち下ろす技を打ちかえした。佐竹はそれを追いかけるが間にあわず、塩田の勝利となった。
「くそー! やっぱ、つえー!」
ネットをはさんで握手する、ふたり。
それをみていたギャラリーが拍手をした。
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