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ゲームが終わったあと、佐藤と塩田は握手をするためにネット際によった。
「久々に負けた! 次は負けねぇからな」
佐藤がネットを越えて手を差し出した。
「次やっても、俺が勝つから」
爽やかに笑いながら、その手を掴む塩田。
「言ってろ!」
ぐっと握った手に力を入れる佐藤。
しかし、塩田は抵抗せず、ふにゃりとされるがままだ。
「握力がもう限界。3ゲームマッチだったら負けてたかも」
少し困ったように笑う塩田に、佐藤は内心きゅんとした。
「またしようぜ。塩田相手だと目一杯やれるから、練習にもなるし」
フッと笑う佐藤につられて笑う塩田。
「いいよ。あと忘れてるようだけど、プロに転向する件、考えといてよね」
「げっ、覚えてたのか。」
佐藤の顔が歪む。
「忘れるわけないじゃん。考えといてね。そしたら練習にも付き合うよ?」
ウインクする塩田に、向かい合っていた王子中の佐藤ファンクラブの面々が倒れた。様式美である。
こうして、塩田の長い1日が終わった。
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