学校でもモテる塩田

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そんなさまざまな思惑がとびかう教室に、大声でさけびながら駆けこんでくる生徒が一人。 「塩田ァ。塩田翔はいるか!」 テニス部部長の西宮が、モーゼのように人だかりを左右に分けつつ、教室に入ってくる。 「ちょっとアンタ、いきなりきて何なのよ! 塩田くんのこと、なれなれしく呼びすてにして!」 塩田の机のまわりに集まっていた女子の一人が、西宮から塩田をかばうように前へ出た。 「そこをどけ。塩田に大事な話があるんだ!」 手でなぎ払うようにしてさけぶ、西宮。 塩田の取り巻きである女子は、ひるみもせず腕を組む。 「どうせまた、テニス部の勧誘にきたんでしょ? 塩田くん、何回も断ってるじゃない! いいかげん、諦めなよ!」 そーだ、そーだと塩田のまわりにいた取り巻きも、西宮につめより、とり囲んだ。 「ええい、どけ! 本当に、大事なお願いをしに来たんだ。ひかないと泣いちゃうぞ! 塩田にいじめられたって、先生に言うからな! そうなったら、推薦で行くはずの高校、行けなくなっちゃうぞ! いいのか、それで!」 それを聞き、西宮をとり囲んでいた輪がほころんだ。西宮はその隙をついて、ほころびから輪の外へ脱出した。そのまま塩田の机の前にたどり着くと、バンっと机をたたいて叫んだ。 「塩田、一生のお願いだ! 俺と一緒に大会に出てくれ!」 真剣なまなざしで、塩田をみる西宮。塩田は、少し困ったように微笑んだ。 「西宮。わるいけど、それはできないよ」 西宮は、目をくわっと見開いた。前のめりになって、塩田に詰めよる。 「なぜだ、理由を聞かせてくれ!」 人々が見守るなか、塩田は口を開いた。 「大会に出るってことは、入部してレギュラーになれってことでしょ? 今までろくに練習に参加してなかった人間が、急にレギュラーになったら、部員からも反発が出てくると思うんだ。 今年最後の大会、ギスギスしたままで終えるのは西宮の本意ではないと思う。 だから、断るよ」 その時、西宮の目が光った。 「その点においては大丈夫だ! みな、塩田の参加を認めてくれた! 別に無理に練習に参加しろとか、入部しろとかいうんじゃないんだ! 仮入部でいいし、今度の試合、1回だけ出てもらえればそれでいいんだ!」 塩田は目を丸くした。 「1回だけ?」 「そう。次の試合、1回だけシングルス2で出てもらえればそれでいいんだ! 頼む、塩田じゃなきゃダメなんだ!」 机に手を置き、ガバッと頭を下げる西宮。 「なにか理由がありそうだね。聞いてもいい?」 首をかしげながら、西宮の顔をのぞきこむようにして聞く、塩田。 「塩田ァ、聞いてくれるか!」 西宮は塩田にすがるように抱きつきながら、ことのいきさつを話始めた。
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