いざ、偵察……!?

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いざ、偵察……!?

そして放課後。 塩田は西宮と一緒に、王子中に来ていた。 「こっそり偵察するはずが……。なんなんだ、このギャラリーは!」 西宮が校門前でさけんだ。 そう、モテすぎる塩田は、いつも女子に囲まれていて、輪の外からでは姿が見えづらい。ドーナツ型に人の壁を作りながら歩いているその姿は、まるで芸能人のようだ。よくみるとギャラリーには男もちらほらまざっている。自称、塩田の舎弟である。荒事になったときに活躍する彼らは、そっと目立たない位置で塩田を見守っている。 「これでは塩田と一緒に、こっそり敵情視察ができないじゃあないか! ちりたまえ、ちりたまえ!」 ドーナツの輪の外側から、ピョンコピョンコはねて言う、西宮。 とうぜん、塩田にはきこえていない。 「ちょっとアンタ。塩田くんをなんだと思ってるの? 塩田くんと話したければ、整理券が必要だってしらないわけ?」 ドーナツの輪の外側にいた女子が、腕組みしてそう言った。 「よくみりゃアンタ、休み時間の時も順番ぬかしして、わりこんできたよね。何様なわけ?」 西宮は衝撃をうけた。 「せっ、整理券……とは?」 はぁとふかいため息をはいて、腕組み女子が、説明しだした。 「本当になにもしらないんだね。みんな塩田くんと話したいから、整理券配る前はちょっとした事故が多発してたんだよ。で、先生からの提案で、少しでも塩田くんの負担をへらして、事故なく話せるようにしようって事になって。会議したんだよ、ファンクラブの面々と先生で。んで、その会議の結果、今の整理券制度が普及したってわけ。整理券は朝いち職員室前で配ってるから、できるだけ早く行ってならぶしかないんだけど、今日はもう配ってないよ、ご愁傷さま。あきらめて帰りな」 「そ、そんな……」 ヘロヘロとその場でくずれおちる西宮。 「これを機に、アンタもファンクラブ入ったらどう? いろいろとルールがあるから、教えてくれるよ」 「ルール……偵察するにも、ルールを守らなきゃいけないのか……」 へこむ西宮。その時、ドーナツの輪がみだれた。 「ごめん、西宮! はぐれちゃったね」 塩田が輪からでて、地面にしゃがみこんでショボくれてる西宮に声をかけた。 「塩田……なぜ、ここに?」 塩田は目をぱちくりさせたあと、ふわっと笑った。 「なに言ってるんだよ。一緒に偵察に行こうって言ったの、西宮じゃん!」 西宮はその笑顔をみた瞬間、無言で手を合わせて泣いた。 「えっ、なんで泣くの? 大丈夫?」 あわてる塩田に、西宮は自嘲した。 「ははっ、整理券のない俺は、塩田と話す資格がない……。もともと、塩田をひとりじめしようとしたのが間違いだったんだ。どうかこんなまぬけな俺を口汚くののしってくれ、塩田よ」 遠い目をして言う西宮に、塩田はしゃがんで目線をあわせる。 「何があったのかはしらないけど、一緒に偵察に行くって言ったでしょ?」 頬杖をついて聞く塩田。無駄にキラキラしている。 「塩田ァ! 整理券がなくても、俺と話してくれるのか……?」 塩田は目をぱちぱちさせた。 「整理券って、なに?」 西宮は塩田の両腕をつかみ、涙ながらに語った。 「塩田と話すには整理券が必要だと聞いた! 俺は……持ってない……!」 くっと顔をそらす西宮。 「えっ、なにそのルール。俺、知らないんだけど。」 塩田の言葉に、西宮の目か点になった。 「えっ、でもさっきそう聞いたぞ。そこの女子に!」 西宮は腕組みをして立っていた女子のことを指差して言った。いきなり話をふられた女子は慌てて叫んだ。 「ちょ、それ塩田くんには内緒のルールだっつの!」 真っ赤な顔をして言う、女子。 「そうなのか?」 西宮は塩田をみた。 「それはこっちが聞きたいかも。整理券ってなに? なんで内緒なの?」 塩田が腕組み女子の方を上目使いでみる。 女子は真っ赤な顔を、両手で隠して言った。 「塩田くんが気を遣うと思って、ファンクラブ内のローカルルールってやつをこっそり決めました……」 「そ、そうなんだ……」 若干ひき気味の塩田に、女子は続ける。 「先生とも話し合って、怪我とか事故を防ぐためにやってました……」 「そうなんだ……知らなかったな。俺のことを考えてしてくれたんだよね? ありがとう」 ふわりと微笑む塩田に、周りの取り巻きたちは失神した。
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