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 私たちにとって、平和は特別なものではなかった。好きも嫌いもたくさんあって――もう少し広い家に住みたいとか、美味しいものを食べたいとか、お洒落がしたいとか――そんな些細な願望も多くあった。  私たちにとって、今日と同じ明日が来るのは当然だった。決して"終わり"を知らなかったわけじゃない。けれど、疑うことを知らなかった。寧ろ『退屈を壊してほしい』なんて言っていたこともあったっけ。    それは突然だった。本当に突然、全てが変わった。予兆はあったけど、予告なく突然。  隣町に爆弾が落ちて、戦争っていうものが始まった。    平凡は奪われ、恐ろしい戦いを強いられた。兵士になって、お国の為に戦いなさいと迫られた。  一応、選択肢はあった。戦闘に行くか行かないか――どうやって死ぬかの選択が。  戦いにいけば、お給料がもらえて生活ができるよ。でも行かなかったら、ご飯が食べられなくなるよ。戦って死ぬか、飢えて死ぬかどっちがいい?――って。  お父さんは天国にいて、お母さんも弟も病気があって。だから私には、最初から選ぶ自由はなかった。  一緒に死んでしまおうか。そうお母さんは言ってくれたけど、私には受け入れられなかった。    だから私は、今訓練所にいる。
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