蒼い舟

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蒼い舟

 その感情は、水面だけが知っている。己の弱さ、脆さは自分の心の内に隠しているはずだった。  今日も潮騒が脳裏を駆け巡り、あの夏を鮮明に思い出させようとする。鯨のように、壮大な人生という名の海を泳いだ高校生生活を、思い出させようとする。  その舟は、青春時代へ向かって漕ぎ出した。綺麗な浅葱色に染め上げた舟が、ゆっくりと進んでゆく。  あの鯨は、まだどこかの海の底を泳いでいる。そう思っていた。
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