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哀する者
東雲の光が差し込む部屋で、子供時代、夏休みに書いていた絵日記を手に取っていた。ただ遊ぶことに無我夢中で、友達とふざけ合っていて、素直だった頃だ。好きなものは好きだと、嫌いなものは嫌いだと言えた頃。
「八がつ八にち きょうはみなとくんとこうえんにいってあそんだ。たのしかったから、またあそびたいな。」大きな文字で綴られている文の上で、「みなとくん」と私が描かれている絵があった。
「みなとくん」は滝野瀬湊。私の青春時代を彩った、幼馴染だ。
くっきりとした二重瞼が特徴的だった。湊は幼稚園から高校時代までずっと一緒だったものだから、友達からも「お似合い」だといわれ続けていた。でも、湊とは一度も付き合わなかった。湊は、中学生になって彼女が出来た。私と湊は、友達以上、恋人未満の関係だった。大学生になってからは一度も会っておらず、湊はポツンと消えていた。もう、私と距離を置くことを決めたのだと思う。
高校生時代、私は一部の女子グループからいじめを受けていた。湊に好意を持っていたリーダータイプな女子が、私のことを気に入らなかったことがきっかけだ。ただ、そのいじめが私の高校生時代の青春を奪っていった。
でも、それ以上に奪ったのが、親友の小さな心臓だった。
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