0人が本棚に入れています
本棚に追加
浅葱色
「ごめん」
私は告白を受け入れなかった。青春の風が止んだ。
「ちゃんと教えて欲しい、あの事件のこと」
親友を殺した私のいじめは、許してはいけない。感情を押し殺し、湊に尋ねた。
「杏奈を殺したの、あなたなの?」
湊は空を仰ぎ、息を大きく吸った。
「羽衣の心を殺した奴らだろ。俺も、杏奈を殺した」
私は体が震えた。
私の好きだった人は、人を殺した。
「杏奈も、羽衣のいじめに参加していた。杏奈を慕っていた友人が誤解をしていじめをした。俺は杏奈と付き合っていたから。俺と羽衣が近寄っていたことが間違いだったかもしれない」
「それで、杏奈が自殺したの?」
「ああ、多分な」
湊は後悔したような顔をしていた。あの踏切の音が、脳内に流れる。
好きな人に怒りを覚えるのは気持ちいいものではなかった。
「俺は、この罪を一生背負うよ」
湊は真剣な顔で言った。その眼差しが、あの踏切を渡った少女のような目をしていた。
私は、辺りには水ばかりで、なにも見えなくなる海を泳ぐ。
湊はあの海で話した4日後、電車が通る踏切を渡り杏奈のもとへ行った。酷い日差しが出た、青春時代を思い出すような日だった。
鯨は、壮大な海のずっと深くまで潜り続けた。
最初のコメントを投稿しよう!