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翌日、補講を終えた俺は急いでグラウンドへと向かった。
猪俣は部活の休憩中で、隣には白石がいた。水筒の底を空に向け喉を鳴らす。
グッドタイミング。フェンスの外から声をかけると猪俣は気づいて振り向いた。
「みずほ先輩、あの相談の謎解けたってさ」
こう言えば意味は通じるだろう。猪俣はすぐさま満面の笑みを浮かべる。
「解けたってまじかよ、みずほたん。ちなみに答え聞いたか?」
「その呼び方やめろって言ったろ」
と言いつつ猪俣の隣の女子を指差す。白石は一瞬、ぎょっとした。
「ははっ、なぁーんだ、もうばれちゃったのかぁ!」
ひどく残念そうな笑いを返す。
その反応にふたりの結託を確信する。俺の仮説通り、ラブレターは謎かけのための偽物だったのだ。
「だからさー、みずほ先輩が事情を聞きたいって言ってるんだ」
「じゃあ俺、部活終わったら会いに行くって言っといてくれな」
「いや、お前じゃないんだよ。会いたいのは白石のほうだって」
「えっ⁉ なんで真なんだよ」
「知らないよ、みずほ先輩がそう言ったんだからさ」
すると白石の顔から笑顔がすっと消えた。不自然なまでの表情の変化に俺は何かあると思った。
「そか、じゃあ真、行って来いよ。キャプテンには断っておくからさ」
「……うん、そうさせてもらう」
猪俣は手を挙げて練習に戻ってゆくが、白石はそんな猪俣の背中をずっと見つめていた。
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