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「これも推測だけど、あなたは彼との距離が近くなりすぎて、『女子』として意識してもらえなかった。だから『戦友』と公言し、マネージャーとしてサッカー部に入部し彼との距離を保っていた。――そこまで彼のことが好きなのね」
とたん、白石は両手で机を思いっきり叩いて立ち上がった。
「どうしてそんなことが言えるんですか! 猛司に好意を寄せられたからって、いい気にならないでください!」
「白石、みずほ先輩に楯突いても猪俣の気持ちが変わるわけじゃない」
「あんたは黙ってろ! 余計な事しやがって! 最初からあんたが猛司の頼みを断ってればよかったんだ!」
激昂する彼女の怒りに俺はおののいた。けれどみずほ先輩はひるむことがない。
「その怒り、猪俣君に対する想いの裏返しなのよね」
「……ッ!」
白石はみずほ先輩を睨みつけたまま席に倒れこむ。歯ぎしりの音が鳴り、ふたつの拳が痛々しいほど強く握られる。
「でもわたし、わかったことがあるの。あなたがラブレターという方法を提案した一番の理由は、自分のほんとうの気持ちを彼に伝えたかったからなんだよね」
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