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冷静さを取り戻した白石は、みずほ先輩への嘘の謎かけを詫びたうえで、ひたいをテーブルに擦り付けて頼んだ。
「お願いがありますッ! 彼が告白したら、どうか断ってください!」
「んー、そりゃ断るわよ」
みずほ先輩の平然とした返事を聞いて白石は顔を上げる。
「ほっ、ほんとうですか!」
絶望で一度は壊れた表情だったが、しだいに元の輪郭を取り戻す。
「だってねぇ、かつき君?」
みずほ先輩はかすかな笑みを浮かべて俺を瞳で捉える。
なんで俺の顔色をうかがうんだ?
怪訝そうな白石の目線がみずほ先輩と俺の間を行き来する。
「あの、ちょっとお尋ねしてもいいですか」
「なあに?」
「おふたりの関係っていったい……」
みずほ先輩はらしからぬためらいを見せる。
「え、と、かつき君、言ってもいい?」
俺が下僕として扱われているなんて、おおっぴらに言えるはずがない。俺はともかく、みずほ先輩がドSみたいに思われたらいたたまれない。
けれど傷心の彼女に同情しないわけじゃないし、俺たちは彼女の弱みを握っているのだ。言っても口外することはないだろう。
「――まぁ、白石が秘密にするならいいっすよ」
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