みずほたんと言うなかれ

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みずほ先輩はこくりと首を縦に振った。桃色の唇を白石の耳元に寄せ、両手で筒をつくって内緒話。 時を同じくして俺は自慢の地獄耳を発動させた。全神経を聴覚に集中させる。 『あのね、かつき君って、実はわたしの、か――ゴニョゴニョ』 ――か? 『下僕』じゃないのか? だとすれば今、なんて言ったんだ? 予想外の答えに胸がざわめく。なにせ聞いた白石は驚き口をあんぐりと開けているのだ。 自失呆然で立ち上がり、機械仕掛けの人形のようにカクカクとした奇妙な動きで歩き入口の扉に向かう。 俺とすれ違いざまにぼそりと呟いた。 「ばれたら黒澤君、誰かに殺されちゃうかもね――」 「⁉」 身の毛のよだつひとことを放った。 みずほ先輩の『か――』で、殺意を抱かれるもの。 それはいったい――。 俺は熟考の末、ひとつの答えにたどり着いた。雲の隙間から差し込む光線のようなインスピレーションが沸いたのだ。
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