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『猪俣猛司様
突然のお手紙、大変失礼します。私はこの気持ちを胸の中に閉じ込めておくことができなくて、この手紙を書くことにしました。迷惑でしたら破り捨てて構わないですからね。
私の景色には必ずあなたがいました。あなたがフィールドを駆け回る姿は眩しくて、飛び散る汗はまるで宝石のように輝いて見えました。
慈愛に満ちたあたたかな眼差し、子供のように無邪気であどけない笑顔、そして心の奥に染み渡る優しい声。
いつからでしょうか、私の胸はくすぶる火鉢のように、ほんのりと熱を帯びていました。けれどその気持ちは炎となって勢いを増し、燃え上がり始めました。
私は、あなたの全部が好きです。
あなたはそんな私のことに気づいているのでしょうか? ううん、きっと気づいてなんかいないと思います。あなたの瞳に私は映っていないのですから。私はそのことが辛くてたまらないのです。
どうかあなたがいつか、私の気持ちに気づいてくれますように』
読み終えた俺は閉口した。
……なんか、真夜中にテンション上がっちゃった系のラブレターみたいだな。
読んでいる俺の方が恥ずかしくなってしまう。
――あれ?
ふと、気になったことがあった。
便箋には水滴を吸い込んだような歪みがいくつもある。梅雨しずくのせいだろうか。それが文末に書いてある名前をにじませ、読み取れなくしていた。
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