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「送り主が誰か分からないんだな」
困った挙句、生徒会の力を借りようというのか。けれどお門違いじゃないか?
「だが、問題はそれだけじゃないぜ」
猪俣は指で手紙の両端を交互に指してみせる。文面の左右にはちいさな縦長の楕円が書かれていた。
それぞれ中に「10」と「6」の数字が記されている。周りにはキラキラ光るマークが描かれていた。
「この数字、どういう意味なんだ?」
「それが分かれば苦労ないぜ。そこで副生徒会長の『みずほたん』にこの件を相談したいんだよ」
「みずほ先輩に⁉」
生徒会は頭脳明晰な学生の集団である。約一名を除くが。
そして清川瑞穂――みずほ先輩はこの高校で知らない人はいない、才色兼備の副生徒会長。俺を生徒会に誘った張本人でもある。
「ああ、お悩み相談っていうのは、『この手紙の謎を解いてほしい』ってことなのか」
猪俣は口を三日月のようにしならせてみせた。
そう、つまり猪俣の頼みとは、俺にみずほ先輩との橋渡しをしてくれ、ということなのだ。
「なあ、いいだろ? お前にしか出来ないことだからさ」
猪俣は俺に肩をすり寄せてくる。気乗りはしないが生徒会員としての使命は果たすつもりだ。
「構わないけど、ひとつ条件がある」
「条件?」
「いいか、みずほ先輩のことを気安く『みずほたん』呼ぶなボケー!」
一喝した俺の豹変ぶりに猪俣は驚き、机をひとつ道連れにしてひっくり返った。
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